再エネ先進国としての中国

丸川知雄(東京大学社会科学研究所教授)
2026/06/10
A vast solar power farm with rows of dark solar panels across flat brown terrain, distant mountains on the horizon and utility poles in the background.
中国青海省共和県にある太陽光発電所の空撮写真。同県には609平方キロメートルの太陽光発電パークがあり、46の企業が入居し、総発電容量は15730mW。2022年8月10日。Featurechina/共同

再生可能エネルギー積極推進の始まり

 中国というとエネルギー源の8割近くを石炭に頼り、多くの二酸化炭素を大気中にまき散らし、硫黄酸化物やPM2.5による大気汚染が深刻な国というイメージがある。2015年ぐらいまではおおむねこのイメージで正しかったが、今は違う。

 まず、エネルギー供給に占める石炭の割合は2024年には58%にまで下がった。電源構成のうち石炭が占める割合も8割から58%に下がり、13%は水力、20%は風力や太陽光など水力以外の再生可能エネルギー(再エネ)でまかなっている。

 中国の二酸化炭素排出量は2位のアメリカの2倍以上で世界最大だが、2030年までに排出量をピークアウトすることを目指して石炭から再エネへの転換を進めている。風力発電と太陽光発電の設備容量ではそれぞれ世界の46%と48%を占め、2位のアメリカに大差をつけている。そのアメリカはドナルド・トランプが大統領に就任するたびに気候変動問題などフェイクだといって二酸化炭素排出削減の努力や電気自動車振興政策を放棄してしまうため、政策が大きく揺れてきた。一方、中国は幸か不幸か共産党の天下が続いているので、政策にはおおむね一貫性がある。

 ただし、中国は経済発展の水準に応じて気候変動問題に対するポジションが変化してきた。1990年代末までは世界銀行の分類でいうと低所得国だったため、1997年に気候変動枠組条約の締約国会議(COP3)で京都議定書が締結された時点では、中国は温室効果ガスの排出削減義務を負わなかった。大気中の温室効果ガスの増加によって地球が温暖化しているとしても、それは先進国が責任を負うべきことで、低開発国には発展のために温室効果ガスの排出を拡大する権利があるはずだ、というのが当時の途上国の立場であった。

 中国が再エネ推進の方向へ舵を切ったのは2005年に「再生可能エネルギー法」を制定してからである。この法律によれば、政府が設立を認可した再エネ発電所に対して、送配電会社は系統への接続を行ない、その電気を全量買い取る義務がある。ただし、買取価格が一般の電気の卸売価格を上回る場合はその差額を小売料金に転化することができる。

 さらに再エネの導入に推進力を与えたのは翌2006年に公布された第11次五カ年計画(2006~2010年)である。この年は中国の二酸化炭素排出量がアメリカを超えて世界一になった年だ。それまで中国は国内で豊富に採れる石炭を主たるエネルギー源としてきた。そのため、先進国に比べて燃料効率が大幅に低く、かつ硫黄酸化物などによる大気汚染も深刻だった。そこで第11次五カ年計画では5年間でエネルギー原単位(GDPあたりのエネルギー消費量)を20%削減するという省エネ目標を掲げた。2007年には初の再エネ中長期計画が作成され、風力発電の設備容量を2010年には500万キロワット(2008年には1000万キロワットに目標を引き上げ)、2020年には3000万キロワット、太陽光発電の設備容量を2020年には180万キロワットとする目標が定められた。

風力発電の展開

丸川知雄

(まるかわ・ともお)東京大学社会科学研究所教授。博士(経済学)。専門は、中国経済・産業経済。著書に、『中国の産業政策―主導権獲得への模索―』(名古屋大学出版会)、『現代中国の産業:勃興する中国企業の強さと脆さ』(中央公論新社)など。

地平社の本

CHIHEI Podcast

2026年7月号(最新号)

Magazine cover with a white dog illustration on a pink background, large red Japanese characters and vertical white text on the right, yellow flowers at bottom.