●7月号の記事一覧は近日中に順次アップ予定です。
編集後記
10年前の今ごろ、連日のように国会前のデモに行っていた。当時の職場の同僚や地元の友人たちと合流し、国会前で「戦争法案反対」の声をあげた。アメリカとの集団的自衛権など、戦争の種を自ら受け入れることにほかならない。
戦後80年とは、思えば、戦争への反省にもとづく日本の平和主義が、アメリカと日本の保守政治家によって切り崩されていく経過でもあった。もちろん、容易に切り刻まれてきたわけではない。だいぶ弱くなったとはいえ、日本の平和主義は根強い。だが、侵略と植民地支配への反省が不徹底であったために、平和主義も不徹底であった。東アジア諸国との関係においてそれは顕著である。
片面講和ではなく全面講和を、ということから始まり、非武装中立論、日米安保を日米平和友好条約に、平和基本法、自衛隊の災害救助隊化と、特集で飯島滋明氏が述べるように、平和のための多くの対抗構想が提起されてきた。その新たなコトバを紡ぐための舞台こそが「論壇」であった(会田論文参照)。たしかに、保守政治が続く中で、その構想のほとんどは現実にならなかった。しかし、対抗構想がなければ、そもそも話にならないのである。
対抗構想の提起と議論こそ、平和と民主主義の種である。その種を撒きつづけなければならない。それが本誌の社会的ミッションであり、本誌が追い求める新たなコトバだ。
今国会でも、デジタル空間を検閲する法律が成立し、アカデミアを政治が制圧し軍事へ動員するための法案も通過しようとしている。マスメディアがこうした政治の危険な動きに対して反対の論陣をはることは、もはやない。前者の法案に反対の論陣をはってきた海渡雄一氏(本誌2025年4月号参照)より、今回の法案を止められるだけの力は今の私たちにはなかったが、としつつ、それでも抵抗の足がかりを残すために、として企画の提起をいただいた。それは誌面化すべく準備しているが、何よりその態度に学びたいと思った。
今号の記念特集の後半は、SNSの熱狂に抗い、ジャーナリズムの実践を続ける「報道特集・特集」のようになった。この泥沼の中で、もがきながら声をあげるメディアを孤立させてはいけない。
読者の皆様に支えられて、創刊2年目を迎えました。また1年、さらに1年と、スタッフとともにコトバを紡いでいきます。
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