『地平』2025年1月号

熊谷伸一郎(『地平』編集長)
2024/12/05

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編集後記

 小社の創業は2024年1月だったので、早いものでもう1年が経つ。単行本は4月から刊行しはじめて14点を刊行できた。本誌『地平』は6月に創刊し、今号で7冊目となる。合計で21点、全速力で駆け抜けてきた1年だった。出版社を立ち上げて何より幸いなことは、こうして刊行できたすべての本と記事について、今の私たちにとって大事なテキストだと自信をもって言えることだ。

 経営的にはまだまだ盤石とは言いがたいが、この底なしの出版不況、雑誌不況の中、健闘しているのではないかと思う。『地平』の読者を広げてくださった方々、ご寄付をくださった方々、SNSや書評で紹介してくださった方々など、物心両面で支えてくださった読者の皆様、そしてすばらしい文章をお寄せくださった執筆者の方々に心より感謝したい。

 2025年は、さらに挑戦の幅を拡大していきたい。書籍では新シリーズを創刊するほか、『地平』ではウェブ版も立ち上げる。詳細は次号以降お知らせしていくが、どちらもなるべく早く実現すべく、スタッフみなで準備を進めている。

 作業を急ぐのには理由がある。特に本誌ウェブ版については、今号で内田聖子氏がアメリカ大統領選について、津久井進氏が兵庫県知事選について書かれているように、情報との接触のあり方が激変し、それが投票その他の政治的な変化をもたらしている中で、急務の課題と思う。

 また、この2025年はいつ何が起きても不思議ではない状況だということもある。第2特集でインタビューを掲載した石井暁氏がスクープした日米共同作戦計画(詳細は小社から刊行予定の氏の近著を読んでほしい)は、軍事分野でそうした状況になっていることを端的に表している。前号で特集した原発で言えば、再稼働が進む中、いつ再び事故が起きてもおかしくない。こうしたことがあまりにもメディアで報じられない。

 2024年は意外に思える選挙結果が続いたが、焦点を当てるべきは情報であり、メディアのあり方だろう。小社でできることは限られるとはいえ、ぶれることのない言論の拠点を一刻も早くつくっていきたい。

 このところ、小社で働きたいという若い人たちからの連絡が続いている。そうした力も得ながら、2025年を駆け抜けていくつもりだ。

 読者の皆様にとっても今年が良い年でありますよう。2025年もどうぞ本誌をご愛読ください。

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熊谷伸一郎

(くまがい・しんいちろう)月刊『地平』編集長。株式会社地平社代表取締役。1976年8月生まれ。フリージャーナリストを経て2007年、岩波書店『世界』編集部に参加。2018年7月から2022年9月まで同誌編集長をつとめる。2023年7月、独立のため退職。著書に『なぜ加害を語るのか』(岩波ブックレット)、『反日とは何か』(中公新書ラクレ)、『金子さんの戦争』(リトルモア)、『私たちが戦後の責任を受けとめる30の視点』(合同出版)、坂本龍一氏らとの共著に『非戦』(幻冬舎)など。

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