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編集後記
本号で12号、創刊から1年を経過します。今どき紙媒体で硬派な総合月刊誌を刊行するという無謀ともいえる取り組みでしたが、どうにか刊行を継続できていることは、ひとえに読者の方々、執筆者の方々のおかげです。また、ひいきにしてくださった書店の方々、印刷会社やデザイン・組版・校正などの協力者の方々、そして、志を同じくするスタッフたちにも心から感謝したい。
やや口幅ったいが、本誌は、今後いかなる状況が出来しても平和や民主主義のコトバを世に送り出していくための言論拠点として創刊された。この1年でウェブ版の立ち上げ、ポッドキャストやイベントなど、身の丈を超える取り組みを展開してきたが、なるべく早く根を張らなければいけないと思ってのことだ。この先に吹くかもしれない風の強さに耐えられるほどに。
今号の第3特集「トランプ政治への反撃」で取り上げたアメリカの状況、とくに北丸氏の論考を読むと、その思いが強くなる。マイノリティへの迫害、さらにハーバードをはじめとする大学への介入、反イスラエル言説への弾圧、政権に異論を唱えるメディアへの攻撃、行政や司法の領域からの反対意見の排除など、市民的な自由と権利は厳しい季節を迎えつつある。そしてこの動きは波及していくおそれがある。
アメリカの動向、特に市民社会の動向を注視するとともに、日本における同様の状況に立ち向かうことで、その抵抗に連帯したい。学術会議の解体法案、軍事研究への強制的な誘導、大学の統制管理の強化、クルド民族など外国籍の住民や難民へのヘイトなど、こちらの状況も依然として危険水域だ。第2特集「性被害と裁判——1ミリ、前に進むために」で辛淑玉さんや仁藤夢乃さんが語る「大衆の暴力」のすさまじさが日本の特徴か。
トランプ政権は関税の「取引」として軍事費の増額、さらなる戦争協力体制の確立を迫ってくるだろう。これは本当に危険だ。今号特集1「軍事費の研究」で各論考が深めているように、日本の場合は「単なる軍拡」(それだけでも大問題だが)では済まない可能性が高い。3・11をめぐる現状や歴史認識の問題を引くまでもなく、現在の与党(と維新などの野党)には過去を反省する知性が欠如しているからだ。
さて、創刊から2年目となる来月号から、新連載を多く開始しますのでご期待ください。また、創刊号から年間購読の方々には更新のご案内をお送りします。どうぞ2年目の本誌もご愛読ください。
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