トランプに挑む「ドン・キホーテ」?——スペイン・サンチェス政権の挑戦

武藤 祥(関西学院大学法学部教授)
2026/06/09
Man in a blue suit speaks at a podium for International Women's Day (8M), with Spain and EU flags behind him.
スペインの首都マドリードで、演説するサンチェス首相=3月4日(ゲッティ=共同)

 本年2月28日に開始されたアメリカとイスラエルによるイランへの攻撃、特に敵対国家とはいえその最高指導者を殺害するという手法は、ベネズエラのマドゥロ大統領の拘束と合わせ、「自分には国際法など必要ない」と豪語するトランプ大統領の行動に「まさか」は存在しないことを世界に示した。

 その約1週間後の3月4日にスペインのペドロ・サンチェス首相が行なったテレビ演説は、アメリカとイスラエルの暴挙に唖然としている世界の人々を大いに鼓舞し、勇気づけた。サンチェスは両国の攻撃をロシアによるウクライナ侵攻、ガザでのイスラエルの虐殺行為と並置した上で、スペイン政府は国際法違反、暴力による問題解決に一貫して反対してきたと述べ、「戦争反対」と、これ以上なくシンプルかつ力強い言葉で自身の立場を表明した。

 サンチェス政権はそれ以降も、スペイン国内の米軍基地の使用を認めないなどの措置を取った。この対応に激怒したトランプはスペインとの貿易の完全停止などをちらつかせた。しかし恫喝に屈しないサンチェスは、むき出しの暴力を振るう大国に物申す勇気ある指導者として、一躍注目を集める存在となった。

 もっとも、こうしたスペインの対応を、サンチェス個人の理念のみから理解することはできない。本稿ではアメリカ、北大西洋条約機構(NATO)との関係を中心に現代スペイン外交を振り返りつつ、サンチェス外交の可能性と限界について考えたい。

スペインと欧米――複雑な関係

武藤 祥

(むとう・しょう)関西学院大学法学部教授。専門はスペイン・ポルトガル政治史。主著に『「戦時」から「成長」へ――1950年代におけるフランコ体制の政治的変容』(立教大学出版会、2014年)など。

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