【杉原浩司さん×畠山澄子さんに聞く】ドローン兵器と市民社会

月刊『地平』編集部
2026/04/30
White Hermes 900 UAV on a runway with landing gear down, clear blue sky above.
イスラエルのエルビット・システムズ社製ヘルメス900型無人航空機。

杉原浩司
武器取引反対ネットワーク(NAJAT)代表。平和構想研究会、STOP大軍拡アクションなどで活動。共著に『戦争ではなく平和の準備を』(地平社)、『亡国の武器輸出』(合同出版)、『ゾンビ家制度』『武器輸出大国ニッポンでいいのか』(あけび書房)。

畠山澄子
ピースボート共同代表。ペンシルベニア大学大学院博士課程修了。専門は核のグローバル史、科学技術と社会論。共著に『ガザ虐殺を考える〜その悲痛で不条理な歴史と現状を知るために〜』(論創社)、『殺人ロボットがやってくる!? 軍事ドローンからロボット兵器まで』(合同出版)。

司会 本誌編集長・熊谷伸一郎


――イスラエルによるガザでのジェノサイドで、その主要な手段の一つとなったのは、ドローン兵器(無人兵器)でした。現在のイラン戦争でもドローン兵器は、ミサイルと並んで攻撃手段の主役となっています。

 日本の防衛省も、ドローン兵器の獲得に膨大な軍事予算をつけるなど、導入に前のめりになり、イスラエル製ドローンの導入も検討されてきました。そこで今日は、市民社会でこの問題に取り組まれているお二人に、ドローン兵器をめぐる課題を語り合っていただきたいと思います。

 それではまず杉原さんより、イスラエル製ドローン導入検討の問題を中心にご報告をお願いします。

イスラエル製ドローンの購入はジェノサイドへの加担

杉原 武器取引反対ネットワーク(NAJAT)の代表を務めている杉原浩司です。日本はこれまで、偵察用など防御的な用途のドローンを、主に米国企業から導入していました。たとえば、海上保安庁と海上自衛隊が導入しているシーガーディアンという大型の滞空型監視ドローンは、攻撃を用途にはしていないですが、中東などでの戦争犯罪に加担しているアメリカ企業ジェネラル・アトミクス製のもので、攻撃型ドローンとして悪名高いリーパーと非常に近い型です。また、すでにアメリカでは「型落ち」として扱われている無人偵察機グローバルホークを非常に高額で買わされてもいます。これらも問題はいろいろとありますが、今回、私たちが特に問題視し、声をあげてきたのは、自衛隊が初めて攻撃型ドローンを導入するとして、その候補にイスラエル企業の名前が挙がったことです。

 NAJATは、「大軍拡と基地強化にNO! アクション」という首都圏の反基地運動を中心とする枠組みに参加してきました。毎年、次年度の予算の概算要求が出た後に防衛省との交渉を行なっているのですが、2023年11月の交渉の際、報道ベースでは攻撃型ドローンの候補機にイスラエルやトルコの企業の名前が挙がっていたことから、状況を問いただしたのですが、その時は検討中だと先送りされました。年明けの2024年2月20日に重ねて質問したところ、攻撃型ドローンについては、導入に向けた実証試験に採用された機種のうち、小型の5機中4機がイスラエル企業の製品で、大型の多用途攻撃ドローンについては、2機中1機がイスラエル製、つまり、検討している7機中5機までがイスラエル製だということが判明しました。

 その時点で、すでにイスラエルによるガザへのジェノサイドは始まっていたわけです。それなのに実証試験に公然とイスラエル製を採用していることが判明し、反対運動を始めました。これらの製品を取り扱っている日本の代理店企業宛てのハガキをつけたアクションシートを配布し、ネット署名も3万筆以上集まりました。代理店は、海外物産、日本エヤークラフトサプライ、住商エアロシステム、川崎重工の4社で、撤退を求める申し入れを行ない、署名も届けました。終盤では、「ジェノサイドに抗する防衛大学校卒業生の会」の平山貴盛さんが防衛省前で10日間に及ぶハンガーストライキを行ないました。

 これより前ですが、伊藤忠商事の子会社の伊藤忠アビエーションと日本エヤークラフトサプライが、イスラエル最大の軍需企業エルビット・システムズと、日本への武器売り込みについての協力覚書を締結していたのです。これに対する取り組みの最中にガザのジェノサイドが激化し、私たちの取り組みも活発化して、最終的に、覚書を終わらせることに成功しました。私は、マレーシアで伊藤忠系のファミリーマートの不買運動が広がり始めたことがとどめを刺したと思っています。

 このように、一般消費者向けのビジネスも展開している場合にはボイコット運動はとても有効です。今回でいえば、住商エアロシステムは住友商事系の会社ですから、同じ系列のスーパーのサミット、ドラッグストアのトモズ、通信会社のジェイコムなどのボイコットを呼びかけました。こうした取り組みに加え、市民と議員が共同して防衛省などに質問を提出し、さまざまな事実を明らかににしながら論点を追及するという政府交渉を重ねたこと、この両面が有効だったと思います。

 自衛隊が採用しようとしている小型攻撃用ドローンには3つの型があります。今年度は1型で、来年度は2型・3型です。その次年度にはさらに大型ドローンの採用が予定されています。

 小型の1型については、イスラエル国営の軍需大手IAI製の2機種が実証試験に採用されていて、海外物産という小規模な軍需商社が代理店でした。ここは系列企業がほぼないので不買やボイコットの余地が極めて狭く、取材は完全拒否、署名も受け取らないなど、対応もひどかった。しかも、実証試験には1機種1円、2機種で2円という金額で入札してきたのです。これは本採用を絶対に取りに行くためで、実証試験では赤字でも本採用を取ればいいという構えでした。

 それがふたを開けてみると、今年2月17日の入札で、オーストラリアのディフェンドテックス社のドローン40だけが入札に応募して採用されることとなりました。結局、IAIと海外物産は入札さえできなかった。これは防衛省側からの働きかけがあったのだろうと推測しています。企業側はやる気満々でしたから。しかも、自民党安保調査会会長の小野寺五典や松川るい、大野敬太郎が1月にイスラエルへ出向いてドローンの視察もしていました。その中でのこの結果ですから、私自身、びっくりしました。

『地平』編集部

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