アルゼンチンミレイ右派政権――失われた70年から脱却できるか

宇佐見耕一(同志社大学ラテンアメリカ研究センター嘱託研究員)
2026/04/23
Man in a dark suit raises his arms and shouts onstage at a crowded event with cameras flashing behind him.
2025年10月に行なわれたアルゼンチンの議会中間選挙で、米トランプ大統領の支援も受けて勝利し、結果を祝うミレイ大統領。2025年10月26日、ブエノスアイレス(ロイター=共同)

はじめに

 経済成長論で例外とされるのがアルゼンチンであり、先進国から「開発途上国」になった唯一の事例とされる。それには失われた30年を経験している日本に住む我々も関心を向けざるを得ない。そのアルゼンチンでは2023年11月に行なわれた大統領選挙決選投票で、198三年民主化以降最も右派的なハビエル・ミレイ氏が当選し、同年末にミレイ右派政権が発足した。202三年の大統領選挙では、ラテンアメリカを代表するポピュリスト政治家ファン・ドミンゴ・ペロンが創設したペロン党(正式には公正党)系の左派フェルナンデス政権の経済相セルヒオ・マッサ氏との決選投票となった。選挙戦でミレイ氏は不要な財政支出を切り詰めるためにチェーンソーを持つパフォーマンスを行ない、経済のドル化などを行なうことによりインフレを抑制することを公約の全面に押し出していた。

 1983年の民主化以降アルゼンチンでは、前述のポピュリスト政党であるペロン党と中道あるいは中道右派政権が交互に政権に就いていた。21世紀になりペロン党系左派政権が4期16年政権を担っていた。ミレイ政権発足前の政権もペロン党系左派政権であった。本稿では、こうしたアルゼンチンの民主化後の政治と経済過程を踏まえて、ミレイ政権登場の背景を説明し、またミレイ政権が実行している政策とその結果を検討する。

21世紀左派政権の功罪

宇佐見耕一

同志社大学ラテンアメリカ研究センター嘱託研究員。日本貿易振興機構アジア経済研究所名誉研究員。博士(学術)。専門は、ラテンアメリカ社会政策論。著書に『ラテンアメリカと国際人権レジーム』(共著、晃洋書房)、『アルゼンチンにおける福祉国家の形成と変容』(旬報社)など。

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