【海北由希子さんに聞く】軍事化への沈黙を拒む——長射程ミサイルと地域住民

『地平』編集部
2026/06/09
Nighttime city intersection with a crowd along the crosswalk, a Japanese flag, traffic cones, and barricades under streetlights.
搬入の夜の熊本・健軍駐屯地正門前。右側に抗議する市民、左側にはそれを牽制する右派が集まった。(提供筆者)

 陸上自衛隊健軍駐屯地(熊本市)への長射程ミサイル配備が、3月8日深夜から9日未明にかけて強行され、3月31日に正式配備された。政府は「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有を進め、「抑止力の強化」と強調するが、生活空間の軍事化を強いられる地域住民への説明は乏しい。

 搬入の当夜、健軍駐屯地前には抗議する市民が集まった。昨年4月号(【海北由希子さんに聞く】軍都熊本で声を上げる)、今年2月号(【海北由希子さんに聞く】この土地を戦争の拠点にはさせない――台湾有事とミサイル配備)に続き、海北由希子さんに、ミサイル配備前後の状況と今後の課題について聞く。(聞き手 本誌編集長・熊谷伸一郎)


知っていて伝えないメディア

――まず、3月の長射程ミサイル配備前後の状況について、お聞かせください。

海北 配備自体は、年度末までには行なわれるだろうと言われていました。だから、いつ来てもおかしくないという緊張感はずっとありました。ただ、実際に「搬入されるらしい」という話が一気に広がったのは、3月6日にNHKが報じてからです。

 その報道が流された時、私は熊本にはいなかったんです。愛知県の小牧に行っていて、現地の市民団体の方々と行動していました。小牧は長射程ミサイルを製造している三菱重工の工場がある場所ですね。その現地で運動をしている方たちと一緒に、工場前で抗議行動をしていました。熊本に配備されるミサイルが愛知で作られている。そのつながりを自分の目で見たいという思いもありました。

 その日の夜、懇親会の最中に熊本の仲間から連絡が来たんです。「海北さん、明日搬入されるそうです。早く帰ってきてください」と。

 すぐ新聞記者の人たちに電話しました。これまでの取り組みの中で、やりとりをする記者は何人もいました。やはり、「いつ知ったんですか、すでに知っていたんですか」と聞かざるをえませんでした。すると、「NHKさんが報じたから、うちも書いていいかなと思って」と言われた。つまり、前から知っていたということですよね。

 私はその時、すごくショックだったんです。メディアがどちらを向いているのか思い知らされた感じでした。新聞やテレビは、権力と距離を取って市民側に立ってくれている、と信じたいんです。でも実際はみんな知っていた。知っていて、私たちから取材はしながらも、私たちに情報を伝えることはしていなかったのですね。

 他の新聞記者に電話しても、「搬入されるみたいですね」と普通に答える。つまり、報道各社の間では前から共有されていた。なのに、市民には何も伝えられていない。私はその時、もうメディアを信じることはできないと痛感しました。記者個人を責めたいわけではありません。でも、「知っていたのに市民には伝えなかった」という事実そのものが、すごく重かった。彼らは取材を通じて情報を得ているのに、それを市民に伝えない。NHKが報道するまで黙っている。これってなんなのでしょうね。

 その一方で、メディアからは「搬入の時には何か行動するんですか」と次々に電話が来るんです。つまり、「反対派は何かの行動をするだろう」と“期待”されている。抗議活動の“絵”を撮りたいということですね。

 それでも心のどこかに、「メディアは市民の側に立っていて、情報を行政からとってきて、私たちに伝えてくれるはず」と期待する気持ちがあったんです。でも、その夜を境に、そうではないのだということを痛感しました。

裏口から搬入強行

――配備当夜は、どのような状況だったのでしょうか。

海北由希子

(かいきた・ゆきこ)平和を求め軍拡を許さない女たちの会熊本・事務局長。1968年熊本市生まれ。18歳で渡米。難民語学学校へ通う傍ら、エイズ患者支援や反戦デモに参加。現在は熊本を拠点に移住労働者支援、医療通訳などを行なっている。

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Large crowd of protesters in front of a historic sandstone building, waving Palestinian flags and holding signs.
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