【関連】特集:米=イスラエルの戦争――ガザからイランへ(『地平』2026年5月号)
2005年頃のことだったろうか。カイロを訪れた際にエジプトのマルクス主義者(1950年代以来のたたかいの経験を持つ老練な理論家)と話していたところ、「今の世界における革命の中心はどこか?」という話題になり、次のような興味深い分析を聞かせてくれた。
曰く、現在の革命運動の中心は1960年代とは少しずつズレてきている。たとえば中南米ではかつてはキューバが革命の中心だったが、「今の中心はベネズエラ」である。中東では以前はパレスチナ解放闘争やナセル体制が注目を集めたが、今、地域における革命の中心と言えるのは「信じられないかもしれないが(believe or not)、イラン」である。そして(ソ連に代わって、米帝国主義に対抗できる勢力として注目すべきなのは)やはり中国だろう。――奇妙に見えてもベネズエラ、イラン、そして中国という3カ国が現在の世界における反帝国主義闘争の要だ、というこの指摘(「信じられないかもしれないが」というのは、むろんこのマルクス主義者自身が、宗教の政治利用を行なうイランの体制に一定の批判的スタンスをとっていたことの表現だろうが)は強く印象に残ったが、2026年現在、ベネズエラとイランを相次いで襲った事態は、この時の会話を生々しく思い起こさせる。
国際法違反の侵略、戦争犯罪
米国およびイスラエルによるイラン攻撃開始(2月28日)から3週間近くが経過したが、この攻撃が国連憲章をはじめとする国際法を完全に無視する暴挙であることは改めて確認しておいてよいだろう。攻撃は外交交渉が継続している只中、全くの不意打ち、「だまし討ち」の形で行なわれた(イスラエルは「先制攻撃」だと主張しているが、イランからの差し迫った脅威がなかった以上、「先制攻撃」――それ自体が国際法上は違法だが――の概念にすら該当しないだろう)。米国は1月にはベネズエラに侵攻してマドゥロ大統領夫妻を拉致したが、今回イランでは最高指導者ハメネイ師を殺害するに至った。明らかな侵略行為、戦争犯罪であり、これを放置すれば私たちは、一切の「国際法」が通用せず、「主権国家」も存在しない(米国とイスラエル以外は)世界に生きることになろう。トランプ大統領は当初、攻撃の主眼は「最も邪悪な人物」(=ハメネイ師)を除去し、「文明そのものに敵対していると言える」イランの体制を倒すことだとして、「体制転換」の意図を公言したが、体制転換を成し遂げる権利を持つのはその国の国民だけであり、これを外部から「力によって」実現しようとするのは明白な国際法違反である。
イラン攻撃にあたり、(「体制転換」と並んで)攻撃正当化の口実としてしばしば言及されたのは「核開発問題」であるが、これは事態の真の性格を隠蔽するための言辞、「目くらまし」の性格が強い。イランは原子力開発を行なってはいるが、核兵器取得の意図はないことを繰り返し公言している。核開発をめぐっては問題の平和的解決のための合意が2015年にいったん成立したのに対し、2018年に第一次トランプ政権が一方的に離脱したという経緯がある。中東で唯一核兵器を保有している国はイスラエルであり(にもかかわらずイスラエルは一切の査察を受けず、NPT〈核不拡散条約〉にも加盟していない)、今回の攻撃はそのイスラエルと米国という2つの核保有国が、非核保有国であるイランに一方的に言いがかりをつけて戦争を仕掛ける、という理不尽な構図となっている。








