【連載】ユース・ポリティクス(第2回)完全な参政権の獲得から始まるもの

能條桃子(一般社団法人NewScene代表理事)
2026/04/30
Cartoon of a pink-haired person with pink sunglasses on the right; bold magenta Japanese text ポリティクス on the left.

若い政治家の誕生──YouthQuake

 2019年から2020年代初頭の選挙で、各国で若い政治家が多く誕生した。2018年にスウェーデンのグレタ・トゥンバーグさんから始まったFridays For Future(FFF)のムーブメントに地続きの形で、これまでの政治家や政党の議論に新しい選択肢を示す存在として、気候変動対策や人権の問題を中心に掲げる10代、20代の候補者が多く登場した。この現象は、若者が社会・文化・政治を揺り動かすほどの大きな変化を起こす現象を指す言葉である「YouthQuake」という言葉とともに、さまざまな国で語られている。

 例えば、ニュージーランドのソフィー・ハンドフォードは、高校生の時、FFF型の気候運動、School Strike 4 Climate New Zealandを友人たちと企画し、17万人を動員した気候アクティビスト・オーガナイザーだ。2019年、彼女が18歳の時に、ニュージーランド北部にあるカピティ・コースト地区評議会の市議会議員に当選し、ニュージーランド最年少級の地方議員となった。労働党に所属しており、現在は2026年総選挙の候補者となっている。

 デンマークのキラ・マリー・ピーター=ハンセンは、2019年の欧州議会選挙で、21歳という史上最年少で欧州議会議員に当選した政治家である。FFFの中心的オーガナイザーとして知られていたわけではないが、FFF以後に顕在化した「気候危機を最優先課題とする若者世代」を代表する存在となっている。気候政策、社会的公正、若者の政治参加を主要テーマとし、「若さ」そのものを政治的正当性として可視化した象徴的事例とも言える。

 振り返ってみるとFFFのムーブメントは、単なる気候デモではなく、若者が議題を設定しメディアと交渉し政治家に要求を突きつけ国際的に連帯するという、政治の実践そのものを10代・20代のうちに経験する場となっていた。多くの参加者が「声を上げる市民」から「意思決定者になる選択」を現実のものとして意識し始めたタイミングだったと言える。

「立候補する権利」がない

 一方、日本はどうだろうか。日本でもFridays For Futureムーブメントが広がり、日本全国に42の地域グループが形成されていた。社会運動の素地が弱い日本でも、確実に気候変動に問題意識を持ち、声を上げる若者が登場した。しかし、彼女たち、彼らに、「政治家になる」という選択肢はなかった。なぜなら、そもそも「立候補する権利」がなかったからだ。

 2016年、投票年齢が18歳に引き下げられた。しかし、立候補できる年齢は、戦後、一度も変わっていない。参議院議員選挙・知事選挙は30歳、衆議院議員選挙、自治体議員選挙などそれ以外の選挙では25歳である。私はこの数年、「立候補年齢引き下げプロジェクト」として、公共訴訟やロビー活動などに、少なくない時間を使ってきた。

 2019年、21歳の時にデンマークに留学していた私は、冒頭で紹介したデンマークのキラさんについて、友達の友達という存在として知った。彼女のことを知った時、同い年の子がEU議員選挙に立候補していることに衝撃を受けた。そして同時に、日本では、自分も含め18歳から29歳は、投票はできるけれど立候補できないという事実に初めて目が向いた。「若者が排除された政治」という認識を持つようになっていった。しかし同時に、当時の自分に政治家になれる自信はなく、大きな声で「若者に立候補する権利を」と叫ぶ気持ちにはなれなかった。ただ、デンマークの若者はすごいな、と思っていただけであった。

 帰国後すぐコロナ禍となった。生活は変わり、大学に行けなくなった。授業についてはオンライン対応が徐々に始まり、それが1年過ぎてもキャンパスには行けないことが常態化したが、政治をみれば「Go Toキャンペーン」が行なわれ、税金から1兆6794億円が使われていた。キャンパスには行けないのに、友人たちと旅行をしている自分。大きな矛盾を感じた。オンラインでの授業も行なわれるようになったが、相変わらずキャンパスの利用ができないためサークル活動などはできず、世代交代ができないなかで完全なキャンパスライフが復活することはないまま、2年が過ぎるころには潰れるサークルが増えていった。これまでの大学生活というものはなくなっていった。

 2020年、テレビを見ていると小池百合子都知事が若者に「STAY HOME」をしきりに呼びかけていた。若者の外出が、感染拡大の原因をつくっているそうである。いかにも若者が「悪者」といった格好で、「どう若者を外出させないか」が話し合われていた。

 しかし、そこに若者の姿はない。

 家族も親戚もいない地域で、一人暮らしの狭い部屋で不安に押しつぶされそうな人、経済的事情で働きに外に出るしかない人、家族と一緒に暮らしているがそこが安全な場所ではない人――。さまざまな背景を持つ若者の目線はそこには存在せず、「若者」をどうするかと客体としてのみ扱われ、主体者としては想定されていない様子に、大きな違和感を持つようになっていった。そういえば、コロナ禍の政策だけでなく、少子化対策も教育や学費についての議論も、あれもこれも、「若者」が語られているようで、そこに若者がいないのではないか、と。

若者が主体として存在する政治を

 若者の投票率が低いと嘆く声がある。しかし、その政治の構成員に、若者の代表者はいない。代表性が担保されていない若者不在の政治に、若者に関心を持ってほしいというのは無理があるのではないか、というのが私の考えである。現在、OECD38カ国のうち、日本のように25歳にならないと下院(日本でいえば衆議院)の被選挙権が与えられない国は、日本を含め残り5カ国である。6割以上の国が18歳で投票ができ、18歳で立候補できる国となっている。若者の被選挙権獲得は、全ての世代の有権者にとって、候補者の幅が広がることでもある。

 私より前からこの被選挙権年齢の引き下げについて問題意識を持ち、働きかけてきた方々のおかげもあり、この数年、日本でも被選挙権年齢引き下げに向けた議論がはじまっている。

 2025年参院選以降、自民党も含め、主要政党すべての選挙のマニフェストに被選挙権年齢引き下げが掲げられるようになった。一歩前進である。

 すでに政治家である人にとっては、自分の敵が増えてしまうことにもつながるという懸念や、若者につとまる仕事ではないという見方によって、また、さまざまに取り組まなければならない課題がある中で優先順位が高くないとされることで、この議論はこれまで棚上げされてきた面がある。

 被選挙権がない人たちの話を決められるのは、被選挙権がある国会議員たちであるという現実を前に、やるせない気持ちになることもあるが、完全な参政権の獲得まで力を尽くしたい。若者が主体として政治に存在し影響力を発揮することができる「ユース・ポリティクス」実現の一歩となると信じて。

■裁判での陳述書
2023年10月12日 第1回口頭弁論期日(東京地裁・第703号法廷)

2025年6月23日 第9回口頭弁論期日(東京地裁・第703号法廷)

能條桃子

「N O YOUTH N O JAPAN」代表理事。「FIFTYS PROJECT」代表。1998年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。慶應義塾大学院経済学研究科修士。20代の投票率が80%を超えるデンマークに2019年に留学したことをきっかけに、日本のU30世代の政治参加を促進する「N O YOUTH N O JAPAN」を設立し、代表理事を務める。20年に一般社団法人化。Instagramなどを利用したSNSメディアの運営や選挙の投票率向上に取り組む。

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