イスラエルに挑むイエメン――パレスチナを支援する最貧国

佐藤 寛(開発社会学舎・主宰)
2025/06/13
サナアで行なわれたイスラエルへの抗議デモ。イスラエル軍によるサナアとホデイダへの空爆を受けて、ホーシー派の支持者たちが大規模なデモを行なった。パレスチナの旗やホーシー派のスローガン「米国に死を。イスラエルに死を。ユダヤ教徒に呪いを」が書かれたプラカードが見える。2024年12月27日。Photo by Osamah Yahya/DPA/共同

 2023年10月に始まったパレスチナ紛争において、イスラエルは国際社会の非難もものともせずに圧倒的な軍事力でハマス、ヒズブッラーなどのパレスチナ勢力をせん滅する勢いで攻撃を続け、パレスチナ人への物資供給も遮断することで「天井のない監獄」状態を作り出している。

 パレスチナ問題、すなわちパレスチナの地にアラブ人がきちんとした権利をもって生きることは、第二次世界大戦後にイスラエルが建国されて以来の「アラブの大義」であったはずである。この大義のために、多くのアラブ同胞は数々の戦争で血を流した。「オイルショック」で知られる1九73年の第四次中東戦争では、エジプトを中心としてアラブ諸国が団結し、サウジアラビアなどのアラブ産油国も世界に圧力をかけてパレスチナにとっての「勝利」をもぎ取った。

 それから半世紀が経った今、パレスチナを軍事的に支援するアラブの国家は一つもない。――いや、正確には一つだけある。それが、国際社会からは承認されていないが「事実上の国家」と呼ばれているホーシー派支配下のイエメンである。

佐藤 寛

(さとう・かん)開発社会学舎・主宰。アジア経済研究所にて二度のサナア駐在を含め40年間、イエメン地域研究に従事。著書に『イエメン もう一つのアラビア』(アジア経済研究所)等がある。

2025年7月号(最新号)

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