これまでの記事
【第1回】差別と排除のなかで置き去りにされる少女たち
【第2回】「少女を守る」と胸を張るおじさんたちが守りたいもの
【第3回】「家族の助け合い」という言葉が隠すもの
【第4回】メディアはどっちを見てる?
【第5回】怒鳴る相手が違う
【第6回】世界各地の実践と議論に学ぶ
【第7回】罰せられるべきば買う者たち
【第8回】買春男の評価なんていらない
【第9回】生き抜くためのシスターフッド
【第10回】買春処罰だけでは足りない
ジェンダー格差社会で増える女性逮捕者
2026年3月、警視庁が、歌舞伎町で去年1年間に売春防止法違反疑いで逮捕された女性の人数を発表した。その数はのべ112人にのぼり、一昨年より15人増えたという。20~24歳が51人ともっとも多く、次いで25~29歳が26人、30代が16人、10代が一昨年よりも11人増えた14人で、中には16歳の高校生もいた。
逮捕者が増えたのは、政治やメディアが路上性売買問題に着目し、警察が女性の摘発に力を入れたからだ。歌舞伎町の性売買スポットとなっている大久保公園やホテル街のエリアでは、毎晩70~80人ほどの女性たちが客待ちをしている。これは今に始まったことではなく、私が知る限り20年以上前から、性売買のために路上に女性が20人ほど立っていた。若年女性の貧困が拡大したコロナ禍を経て、2023年頃から、その数は目に見えて増え、若年化している。
こうした状況がSNSなどで拡散され、ここ数年、世界中から「自国でできないことが日本ではできる」と買春者たちが集まっている。それを受けて、高市政権が買春処罰導入に向けた検討を指示した。買春処罰は歓迎だが、性売買を女性に対する人権侵害と認識し、買春処罰と同時に女性の非犯罪化と、性売買女性に対する脱性売買支援を含めた「性売買防止法」の導入が必要だと、これまでの連載でも述べてきた。
現行の売春防止法では売る側のみが勧誘等罪で処罰の対象となっており、政府は買春処罰の導入によって両者への処罰の「均衡」を図るつもりのようだ。しかし、それでは売る側と買う側の権力関係は変わらない。
性売買において売る側のほとんどは女性であり、買う側のほとんどが男性であることからも明らかなように、性売買はジェンダー暴力の問題、女性差別が根底にある問題である。性差別やジェンダー格差が深刻な社会だからこそ、女性たちが性売買に誘導されている。
今、円安の影響もあり、日本に海外から買春者が集まっているが、日本の男性たちも1970年代、フィリピンやタイ、ラオスなどの東南アジアや韓国などに買春ツアーに行き、国際的な批判を浴びた。お金のある人が、ない人たちを買うということが性売買においては常である。
性売買の背景が無視されるなかで
性売買が合法化されたドイツやオランダ等の他国でも、性売買の現場には、虐待や貧困、障害のある女性や、その国の言葉を話せない女性、移民や就労資格がない女性が多くおり、社会構造が女性を性売買に誘導していることが明らかだ。


