『地平』2026年2月号

熊谷伸一郎(『地平』編集長)
2026/01/07

編集後記 

 新年あけましておめでとうございます。読者の皆様、執筆者の皆様に支えられ、おかげさまで地平社は創業から二年、本誌も刊行二〇号を迎えることができました。年間購読をしてくださる読者も着実に増えています。スタッフ一同、心より御礼を申し上げます。

 創刊の志である「コトバの復興」への道のりはまだ入り口に立ったばかりであり、経営基盤もまだまだ脆弱ではありますが、手応えは感じています。さらに動きを加速していきたいと思っています。

*  *  *

 二〇二六年という年がどうなるかを推測することは難しいにしても、どのような年にしてはいけないかは、はっきりしている。日本が戦後八一年目にして再び戦争を始める年にしてはならないし、再び原発事故を起こす年にしてはならない。今号はこの二点に関わる特集を組んだ。

 軍事費の膨張は、まず軍需産業を潤し、そしてそこに群がる人々を潤す。日本だけではなく、世界共通の現象であろうが、トリクルダウンにより軍事費が社会に溢れ出すときに何が起きるかを、これから私たちは目撃することになるだろう。いや、軍拡を推し進める政府の「有識者」会議にマスメディア幹部が名前を連ねる中、「目撃」すらできないかもしれない。政治と財界とメディアが利権集団として一体になるその原型を、私たちはすでに3・11以前の原子力ムラという形で体験している。

 日米安保の「深化」、米軍への従属的な「協力」と軍拡を前提にした発言だけがマスメディアで許容され、それが「中道」であり標準とされ、異議を唱えるコトバは(憲法の理念に即した発言に過ぎなくても)異端ないし極端として排される。安保問題だけではなく、社会の構造をラディカルに変えようとする言説に、その排除と攻撃のシステムが働き出す。

 この構造をどう突破していくか。どうにも、相手側の資金力と権力が大きく、なかなか困難な挑戦になりそうではあるが、しかし、そう、コトバは無力ではない。

 それに、希望は決して小さくない。今号の座談会(「社会運動をどう再構築するか?」)での活発な議論を聞いていて、新たな連帯への道筋が見える思いをおぼえた。このような議論を次号以降、さらに深めていきたい。

 本誌は二〇二六年も挑戦を続けます。読者の皆様もどうぞ健やかにお過ごしください。

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熊谷伸一郎

(くまがい・しんいちろう)月刊『地平』編集長。株式会社地平社代表取締役。1976年8月生まれ。フリージャーナリストを経て2007年、岩波書店『世界』編集部に参加。2018年7月から2022年9月まで同誌編集長をつとめる。2023年7月、独立のため退職。著書に『なぜ加害を語るのか』(岩波ブックレット)、『反日とは何か』(中公新書ラクレ)、『金子さんの戦争』(リトルモア)、『私たちが戦後の責任を受けとめる30の視点』(合同出版)、坂本龍一氏らとの共著に『非戦』(幻冬舎)など。

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