生きることが否定されつづける――強制送還がもたらす命と尊厳の搾取

加藤美和(仮放免高校生奨学金プロジェクトチューター)
2026/06/01
Three panelists sit at a long table; the middle person speaks into a microphone during a discussion or protest event, with banners behind them.

 「(ピンポーン)サンゴニンニ~。こんにちは~」

 扉の向こうから、ダダダダダと走ってくる足音が聞こえる。扉が開く。笑顔が見える。「元気そうだ、よかった」と心の中で思う。そして、ハグをする。小さい体。あっという間に私の身長を超すんだろうな。

 ある家族を訪問する。私の役割は、次のようなことだ。家賃や生活費の支援、入管の出頭日や難民審査の状況の確認、子どもの病院の付き添い、小学校からの手紙の説明、役所や地域のNPOとのやり取り、親の仕事探し。子どもとの遊び、遊び、宿題、遊び……。

 2026年3月中旬、この家族の難民認定審査が不認定処分となった。入管(出入国在留管理庁)にいる活動仲間からその連絡を受けたとき、この家族と過ごしたたくさんの思い出が湧き出てきた。小学校に入る長女のためにランドセルを持って行った日、ランドセルを背負った顔は少しこわばっていた。入学して半年後には、3つ下の妹の「ランドセルの色は何色だ!」とはしゃいでいた。国語の音読は一文字一文字ていねいに読むし、算数の計算を間違えると少しとぼけた顔をする。すぐに母親の後ろに隠れる次女は、言葉が増えてきた。一人でお着替えもできる。ハイハイで病院を駆け回っていた次男は、今では立って走り回っている。長男はいつもハグをしてくれるし、遊んでいるときは体当たりしてくる。

 そんなあたたかい家族に対して、「帰国することはできないの?」と尋ねる。難民認定が不許可となり退去命令が出てしまうと、いつか強制送還される。それを強化するのが「不法滞在者ゼロプラン」だ。

 私は感情的に、「帰れない」と言いたいのではない。そもそも、子どもたちに帰る〝故郷〟はないのだ。子どもたちはみな、日本で生まれ、日本で育ち、日本から出たことはない。日本で生きることになんの疑いも抱いていない。それに、両親の出身国が異なるため、それぞれが出身国へ送還されると、家族は引き離されることになる。日本で生まれ育ったことが、まるで犯罪であるかのように言われ、〝生〟を否定されている。

 2025年5月に入管庁が公表した「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」は、「ルールを守らない外国人に係る報道がなされるなど国民の間で不安が高まっている」ことを理由に、退去命令が出ている送還忌避者を5年半で半減させるとしている。同年10月10日に公表された2025年1月から8月までの実施状況では、護衛官つき国費送還は前年同期と比較して1・4倍の203名。そのうち、18歳未満の子どもは7名であった。これまで難民申請中は強制送還されないという決まりがあったが、2023年の入管法改定により、難民申請が3回目以降の場合は送還可能となった。そのせいで送還された難民申請者は42名である(1)。その後、9月から11月の3カ月では、94名が護衛官つき国費送還をされている(2)。昨年全体を国籍別でみると、トルコがもっとも多く全体の約22%で、フィリピン(約15%)、スリランカ(約14%)と続く。

(1) 出入国在留管理庁「『国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン』実施状況
(2) 2025年12月26日、参議院質問主意書第291国会74号

 本稿では、在留資格のない仮放免の子どもと関わってきた経験から、ゼロプランが変えたかれらの状況と、それに対しどのように声を上げてきたのかについて紹介したい。

「仮放免」の若者たちが直面する生存権の否定

加藤美和

仮放免高校生奨学金プロジェクトチューター。2023年から延べ60名の高校生に対して、30名の大学生が伴走。その一人として仮放免の子どもたちと関わる。

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