気候危機を回避するため、脱炭素に向けた排出削減・省エネ・再エネ導入が国・地域で進められる一方で、大規模エネルギー消費施設の計画が地域で広がっている。
データセンターは、大規模火力発電所、高炉製鉄所などと比較すればエネルギー消費量やCO2排出量は小さいが、大規模な計画ではセメント工場や化学工場並みの100万トン以上のCO2排出量を持つ計画が存在する。
立地も、大規模工場が住宅地とは離れた臨海コンビナートなどに立地することが多いのに対し、データセンターは住宅地近くの計画が多いことも特徴である。
送電会社は、送電線の空き状況をもとに「供給可能エリアマップ」「ウェルカムゾーンマップ」を示し、データセンター事業者などは市町村などの意向に関係なく進出計画を決める。
東京都の西部に位置する昭島市では、ゴルフ場跡地を再開発し、延床面積二九万平方メートルのデータセンターを建設することが計画されている(註1)。
公表データから推定されるこのデータセンターからのCO2排出量は、昭島市全体の排出量の四倍に達する。
同じく東京西部の日野市にもデータセンターの建設計画があり(註2)、こちらは住宅地がまわりを囲んでいる工場跡地に計画されている。延床面積は16万平方メートルと、昭島市計画の約3分の2にあたるが、この計画については受電容量、エネルギー消費量や電力消費量、CO2排出量、使用電力の種類、省エネ設備などが非公開となっている。さらに、千葉県印西市には、受電容量で昭島市計画の約1.5倍におよぶ計画がある。
これらは立地自治体全体の電力消費量、CO2排出量、排熱量を超える大規模な計画となっており、地域環境への影響も懸念される。ここでは、規模が大きく、人口密集地域でもある東京都昭島市の計画を例に、その規模と影響、地域の政策などについて検討する。
東京都昭島市のデータセンター計画
東京都昭島市は人口11万人、住宅地を中心とした人口密度の高い自治体で、市内のゴルフ場が緑地になっていたが閉鎖となり、ここに物流施設とデータセンターを建設する計画がある。
延床面積(データセンター部分)29万2000平方メートル、受電容量約300MW(30万kW)、電力消費量はデータセンターと物流施設を合わせて推定で年間36億kWh、推定エネルギー消費量1万3000TJ、推定CO2排出量は180万t─CO2(以下、CO2排出量は単にトンで表記する)であり、その大半99%はデータセンターからである。
昭島市全体の2021年度のCO2排出量は、工場、オフィス等、家庭、自動車、鉄道のエネルギーからのCO2排出量と、非エネルギーの廃棄物焼却のCO2排出量を合わせて43・8万トンである(ECOネット東京、2024)。このデータセンター計画によるCO2排出量は推定180万トンで、市全体の排出量と比較して、四倍強と予想される(図1)。

これは全国の情報処理サービス業(主にデータセンター)の2022年度のCO2排出量190万トンに匹敵する。すなわち、全国の同業種のCO2排出量を約二倍にする規模である(図2)。電力消費量は推定で年約36億kWh、全国の情報処理サービス業の2022年度電力消費量41.6億kWhに匹敵し、やはり日本の同業種の電力消費をほぼ2倍にする規模である(図3)(経済産業省、2024)。

自治体の電力消費量と比較すると、2022年度の昭島市全体の電力消費量は6.3億kWhであるので、予定されているデータセンター施設の電力消費量は、推定で市の電力消費量の約6倍になる。
他の自治体と比較すると、この施設は鳥取県、高知県の電力消費とほぼ同じであり、市町村と比較すると推定電力消費量は全国33位に相当し、政令指定都市の静岡市や熊本市、県庁所在地の富山市、熊本市、宇都宮市、工業地帯の広島県福山市や兵庫県尼崎市、オフィス街で電力多消費の東京都千代田区、中央区、新宿区、人口の多い東京都世田谷区(80万人)などとほぼ同じである(図4)(経済産業省、2023a)。

■床面積あたりCO2排出量
この計画の床面積あたりCO2排出量は推定で6トン/平方メートルである。これは東京都の大口事業所むけ総量削減義務化制度・排出量取引制度対象の都内の通信業とデータセンターの中で最大規模の事業所三カ所の約2t─CO2/平方メートルと比較してその3倍である(東京都、2024a)。東京都の大規模排出事業所(排出量取引制度)の情報通信業の床面積あたりCO2排出量平均値と比較すると約8倍になる(図5)(東京都2024b)。