【関連:この著者の本】『ルポ 司法崩壊』(後藤秀典著、地平社)
●国策に従順な「法の番人」最高裁の現在●
国も東京電力も原発事故の責任なし? 国策に忠実に従い、政府に忖度する「法の番人」最高裁のもと、司法全体の劣化が進む。司法の独立が内側から崩れていく現状を報告。
原発が推進されている。地震と津波による事故から大量の放射性物質が放出され、人々が被ばくと避難を強いられた3・11から、まもなく一五年。日本は、再び原発を国策として推進する国家に戻ってしまいつつある。
原発事故の直後、福島から北関東、さらには首都圏までが高濃度の放射能におおわれ、一〇〇〇万人単位の人々の避難と首都機能の喪失——日本という国家の崩壊までが視野に入った。そうならなかったのは、四号機の使用済み燃料棒プールに予期せぬ水が流れ込んだことなど、偶然の結果にすぎない。そのリアルな恐怖の中で、当時の民主党政権も、野党だった自民党もまた「原子力への依存の低減」といった腰の引けた表現ながら、総じて日本は脱原発の方向へと進んだ——かのように見えた。
だが、再び、原発は推進されるようになった。なぜなのか。本連載では、「労働者」の側から原発推進を担う集団、電力総連(全国電力関連産業労働組合総連合)を追う。
全面的な原発推進
「改めて再稼働の必要性を実感した。……党一丸となって、再稼働に向けて取り組みを進めてまいりたい」
二〇二五年四月、中部電力浜岡原子力発電所を訪れた、国民民主党玉木雄一郎代表はこう述べた。
去年七月に行なわれた参議院選挙で、参政党とともに躍進した国民民主党。選挙区で一〇人、比例代表区で七人、計一七議席を獲得し、改選議席数四から四倍超となった。現在、衆議院議員二七人(第四会派)、参議院議員二三人(第三会派)、合計で五〇人の国会議員を抱える。地方議員は、全国で三〇〇人を超える。
YouTubeを駆使し、若い世代の認知度も高い玉木雄一郎が率いる国民民主党は、急成長する新しい政治勢力のように見えるが、いったいどんな政党なのか。本連載の第一回では、電力総連(全国電力関連産業労働組合総連合)と関係の深い国民民主党の「下部構造」に迫ってみたい。
去年七月に発行された国民民主党の政策パンフレットの「原子力政策」にはこう記されている。
「原子力を我が国の電力供給基盤における重要な選択肢と位置付け、次の考え方に基づき原子力発電を最大限活用します。①運転期間は運転開始から原則四〇年としつつ、科学的・技術的根拠に基づく厳格な運転期間を適用する。②法令に基づく安全基準を満たしたうえで避難計画を作成し、地元同意を得た原子力発電所は早期に稼働させる。③エネルギー安定供給確保とカーボン・ニュートラル社会の実現に向けてあらゆる手段を確保・活用する」
さらに同党は原発の新規建設にも積極的だ。「次世代軽水炉」や「小型モジュール炉」などの開発も進める。それを経済的に支える仕組みも整えるとしている。政府・自民党より、さらに前のめりといえる全面的な原発推進政策だ。
二〇二四年一一月、玉木代表は、当時の石破首相と面会し、政府が改定作業を進めていた次期エネルギー基本計画に、原発の新増設などを反映させるように求めた。
去年二月、政府が決定した第七次エネルギー基本計画は、「既存炉の最大限活用」、原発運転期間の延長、さらに「次世代革新炉の開発・設置」などをうたい、国民民主党の原子力政策と軌を一にするものとなった。
同党の原発推進へのこだわりは政府に対してだけでなく、野党側にも向けられる。公明の連立離脱により与野党が伯仲した二〇二五年一〇月の首相指名選挙。玉木代表は、国民民主党に連携の秋波を送る立憲民主党に対し、「政権を共にするということであれば基本政策の一致が不可欠だ。我々が求める安全保障政策、原発を含めたエネルギー政策は一致させておかないと、政権もガタガタする」として、原発政策について推進の立場を明らかにするようゆさぶりをかけた。
なぜ、国民民主党は、これほどまでに原発推進に執着するのか。
かつての民社党と相似形
参議院には全国比例区が設けられている。その制度上の目的の一つは、職能や理念などにもとづく各種団体などの意見を国政に反映させることだ。つまり、全国比例区に立てられている候補者を見れば、その政党がどのような勢力や団体を代表しているかがわかる。
二〇二二年と二五年に行なわれた参議院選挙の全国比例区における国民民主党候補者の票数を見てみる(表1)。

順番の違いがあるものの、上位三位までは、UAゼンセン(二〇二二年当時はUIゼンセン同盟)、電力総連、自動車総連出身の候補者が占め当選している。国民民主党比例代表区は、三つの労働組合出身者の指定席と言えよう。
この三つの労組は、いずれも民間大企業の産業別労働組合で、連合(日本労働組合総連合会)に加盟している。連合は日本最大の労働組合のナショナルセンターであり、約七〇〇万人の労働者が加盟している。総評や同盟など四つの労働団体が統一され、連合が結成されたのは一九八九年。よく知られているように、総評には社会党支持の左派系組合が、同盟には当時の民社党を支持する民間大企業労組が多く加盟していた。同盟系は労使協調路線を明確に打ち出し、共産党やその系列の労組を強く敵視した右派系労働組合だ。当時、同盟の支持を受けていた民社党は、安保政策では自民党より「右」と評される政策を掲げた。
こうしてみると、現在の国民民主党の立ち位置は、かつての民社党と相似形に見える。国民民主党は、決して新しい形の政党ではない。
電力総連
電力総連には、全国に一〇ある電力会社(北海道電力、東北電力、北陸電力、東京電力、中部電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力)を中心に、日本原燃、日本原電、J‐POWERなどの発電会社、その他の送配電・工事など電力関連企業の労働組合が加盟している。組合員数は約二〇万人。民間企業の労働組合では日本で八番目の規模だ。傘下の企業ごとの労組の多くは、雇用されるすべての労働者がその労組に加入するユニオンショップ協定を会社側と結んでいる。つまり、電力業界で働く労働者のほとんどが電力総連の組合員ということだ。方針に「電力関連産業の持続的発展」を掲げ、労使協調路線をとる。
現在、電力総連の会長を務めているのは、関西電力労働組合出身の氏だ。一九八四年に関西電力入社、関西電力労働組合本部書記長、本部副執行委員長、本部執行委員長、連合大阪副会長などを歴任し、二〇二三年九月に電力総連会長に就任した。翌一〇月には連合の副会長にも就任している。
壬生委員長は、経済産業省の審議会であるエネルギー調査会に属する原子力小委員会の専門委員を務める。政府の原子力政策の方向性について議論する委員会だ。
二〇二四年一〇月、壬生委員長は、原子力小委員会に以下のような意見を提出した。
次世代革新炉の開発・建設
〇原子力の位置づけなど将来見通しの明確化について
・(略)次世代革新炉の開発・建設など開発までのリードタイムが長い原子力発電の特徴を踏まえると、事業継続の予見性を高めていく必要があります。
・(略)エネルギー政策における原子力の位置づけを明確にするとともに、具体的な開発・建設の目標量やスケジュールを掲げ、国が前面に立って原子力政策を推し進めることが極めて重要であると考えます。
政府に対し国主導で原子力政策を進めることを迫る内容だ。原発を抱える電力会社の労働組合が主力を占める電力総連は、一貫して原発推進を主張してきた。東京電力福島第一原発事故は、その方針に大きな影響を与えなかった。
二〇二五年の参議院選挙比例区で、党内第二位で三期目の当選を果たした浜野氏は、一九八三年に関西電力入社。 関電労組本部書記長、電力総連事務局長、電力総連会長代理などを務めてきた。現在、国民民主党の総務会長にも就いている。総務会は、選挙や国会運営など党運営に関する重要事項を議決する機関だ。
二〇二二年の参議院選挙比例代表区で、党内トップで初当選した竹詰仁氏は、一九九一年に東京電力入社。東京電力労働組合中央書記長、中央執行委員長、電力総連副会長などを務めてきた。浜野氏、竹詰氏、どちらも電力総連の中枢を担ってきた経験の持ち主だ。
電力総連出身の二人の国会議員が所属し、衆院選や地方議員選でも全面的な支援を受ける国民民主党が、積極的な原発政策を掲げるのは、いわば当然のことだろう。では、電力総連は、どのように参議院選挙を闘ってきたのか。
電力総連の組織力
電力総連のウェブサイトを開いてみる。すると、最初に出てくるのが、浜野、竹詰両参議院議員と壬生電力総連会長らが万歳する写真を真ん中に、「第27回参議院議員通常選挙 浜野よしふみ当選御礼 多大なるご支援・ご協力に感謝申し上げます」と書かれたバナーだ。数秒たつと次のバナーが表れ、浜野氏と竹詰氏のイラストの間に「働く仲間の声を国政に!」と書かれている。三番目のバナーも、大きなホールで浜野氏、竹詰氏、壬生氏が最前列にならび、数百人の人々がそれを囲む写真。四番目は、ヘルメットをかぶり作業服を着た浜野氏、竹詰氏のイラストから、「まっすぐに、力強く! 働く仲間のために」「頼れる政治。職場の声が原点!」と吹き出しが出ている。電力総連がいかに参議院選挙を重視しているかが一目瞭然だ。
選挙戦で、まず注目すべきは、電力総連の組織力だ。参議院全国比例区で当選した三つの労働組合出身の各候補が個人名で獲得した票数と、各労働組合の組合員数を見てみる(表1)。参議院全国比例区は、先述したように各種団体を代表する候補が多い。個人名の投票数は、その候補者が所属する組織の票が大半だとみられる。去年の参議院選全国比例区で個人名の投票でトップとなったのは、UAゼンセン出身の田村麻美氏。イオン労組の中央執行委員を務めていた。UAゼンセンは繊維・衣料などの製造業、スーパーマーケット・百貨店など流通産業、外食・ホテルなど総合サービス産業で働く労働者を組織する日本最大の産業別労働組合だ。田村氏の個人名で獲得した票数は、約二〇万票。公表されている直近の組合員の数は、一九三万人(厚生労働省「令和6年労働組合基礎調査の概況」)。組合員数に対する得票数の割合は10%強となる。一概には言えないにしても、おおむね組合員の一割が田村氏に投票した計算になる。
二番目の票数を獲得したのが電力総連の浜野喜史氏だ。得票数は一九万票。これに対して、組合員は一九万六〇〇〇人。組合員数に対する得票数の割合は、実に98・7%に達する。組合員ほぼ全員が浜野氏に投票した計算になる。
三位の礒崎哲史は自動車総連の出身だ。得票数は約一八万票。組合員数は七八万人。組合員数に対する得票数の割合は23%。
二〇二二年の参議院選挙では電力総連出身の竹詰仁氏がトップであり、組合員数に対する得票数の割合は、実に11 7・7%。組合員数以上の票を獲得している。
二〇二二年、二五年、いずれの参議院選挙でも電力総連の候補者は、他の労働組合に比べてダントツに高い組織内の得票率を安定的に確保している。電力総連は他の労働組合に比べて格段の組織力を持っているといってよいだろう。
後述する選挙運動費の問題で取材に応じた竹詰仁参議院議員は、電力総連が、選挙を重視する理由、そして、強い組織力を持っている理由をこう語った。
「エネルギーに関わる電力関連産業は政治によって影響される度合いがかなり強い。例えば原子力を進めるのかとか、カーボン・ニュートラルを進めるのかとか、政府がどっちかに舵を切るだけで、直接的な影響がある。だから、組合員の政治に対する関心度というのがより強いのではないか」
電力総連の資金力
次に、電力総連が参議院選挙にどのくらいの資金をつぎ込んでいるのか見ていく。
政治資金規正法で、労働組合が直接、政治家に献金することは禁止されている。しかし、労働組合の政治団体が、政治家の政治団体に献金することは認められている。電力総連は、「電力総連政治活動委員会」という政治団体を抱えている。電力総連政治活動委員会の主な収入は、東京電力労働組合政治連盟、関西電力総連政治活動委員会など、電力総連に加盟する各労働組合の政治団体からの毎月の寄附だ。電力総連政治活動委員会の二〇二四年の収入総額は約一億七〇〇〇万円。それを国会議員の政治団体や地方選挙を迎える加入組合の政治団体に寄附として配分している。
際立つのは、電力総連出身の浜野喜史、竹詰仁両参議院議員の政治団体への寄附だ。浜野参議院議員は、「浜野よしふみを支援する会」、竹詰参議院議員は、「竹詰ひとしを支援する会」という政治団体をそれぞれ持っている。
表2は、電力総連に関連する政治団体から「浜野よしふみを支援する会」、「竹詰ひとしを支援する会」への寄附をまとめたものだ。

まずは、去年当選した関西電力労働組合出身の浜野喜史参議院議員について。参議院選挙が行なわれた二〇二五年分の政治資金収支報告書はまだ公開されておらず、二〇二二年〜二四年分の寄附を見ていく。
二〇二二年、電力総連政治活動委員会から五〇万円の寄附があった。選挙二年前の二〇二三年一二月二二日、電力総連政治活動委員会から二〇〇〇万円が寄付された。この年の六月に「サクセス三田会」という政治団体から一〇〇万円の寄附がされている。サクセス三田会の収支報告書を見ると所在地は電力総連政治活動委員会と同じビルの同じ階だ。代表者の名前は違っているものの、会計担当者の名前は同じ。同会は二〇二二年に、電力総連政治活動委員会から二〇〇〇万円の寄附を受け取っている。所在地から見ても、会計責任者から見ても、受け取った寄附から見ても、サクセス三田会は、電力総連に関連する政治団体といって間違いないだろう。
選挙前年の二〇二四年、浜野よしふみを支援する会は、電力総連政治活動委員会から五〇〇〇万円もの寄付を受けている。まとめると、「浜野よしふみを支援する会」には、二〇二二〜二四年の三年間に、電力総連政治活動委員会とサクセス三田会から計七一五〇万円の寄附が寄せられた。この二団体以外からの寄附はない。「浜野よしふみを支援する会」は、電力総連に関連するこの二つの政治団体からの寄附によって成り立っていると言えよう。
次に、東京電力労働組合出身の竹詰仁氏が、参議院議員に当選した二〇二二年を挟んだ、二〇二一〜二三年の間の電力総連に関連する政治団体から「竹詰ひとしを支援する会」への寄附を見てみる。二〇二一年、電力総連政治活動委員会から総計で五〇〇〇万円、東京電力労働組合政治連盟から四二〇万円、年間合計で五四二〇万円の寄附をうけた。参議院選挙が行なわれた二〇二二年、電力総連政治活動委員会から五〇〇〇万円、関西電力総連政治活動委員会から二六五万二四〇円、合計で五二六五万二四〇円。選挙翌年の二〇二三年には、電力総連政治活動委員会から一〇〇〇万円。選挙を挟んだ三年間で、電力総連関係の政治団体からの寄附の総額は、一億一六八五万円にのぼった。
この間「竹詰ひとしを支援する会」への電力総連関連政治団体以外からの収入は、記載されていない。
参議院選挙を支える全国の電力会社労組
選挙が近づくと、二人の候補者は全国各地の電力総連加盟の労働組合や電力関連の職場を目まぐるしく回った。去年七月に行なわれた参議院選挙での浜野喜史氏の動きを浜野氏のSNSで追ってみると、五月二七日の青森県六ケ所村日本電源労働組合から始まり、中部電力労組本部定時大会(二八日)、東電労組本部定時大会(二九日)、JERA労組本部定時大会(三〇日)、九州電力労組本部定時大会(六月五日)、関西電力総連労使政策フォーラム(六日)、北陸電力労組定時大会(一一日)、北海道電力送電労組定期大会(一二日)、四国電力総連定時大会(一三日)、日本原電労組定時大会などと全国の電力総連の組合を回りつづけた。公示日は、電力総連の「出発式」を経て都内電力関連職場を回り、投票日直前まで、福岡、広島、北陸、東北、関東、関西、中部、北海道、四国を回り、各地の電力総連出身の地方議員とともに遊説や演説会をこなした。そして迎えた七月二〇日の投票日。浜野氏は、全組合員数と並ぶ票数を獲得し、三期目の当選を決めた。
選挙資金の余剰金はどこにいったのか
二〇二二年当選の竹詰仁参議院議員の選挙資金の流れを調べているうちに一つの疑問がわいてきた。
政治資金規正法で、候補者個人への寄附は禁止されている。ただし、これには二つの例外がある。一つは選挙運動のための寄附。もう一つは、政党からの寄附だ。総務省は、候補者の選挙運動に関わる収支を公表している。そこに記載されている竹詰氏個人の選挙活動費の収支をまとめたのが、表3だ。
竹詰氏個人への寄附は、国民民主党参議院比例区第二総支部から、五〇〇万円。国民民主党から五〇〇万円。電力総連政治活動委員会から一〇〇〇万円。合計で二〇〇〇万円だ。支出は、選挙事務所の家賃、印刷費など合計で約一二〇四万円となる。そのうち、ポスターやビラの作成費など約四四三万円は公費負担となる。
寄附総額から、公費分を除く支出を引くと、約一二三八万円。集めた寄附の半分以上が使われず余ったことになる。この余剰金はどこに行ったのか。
選挙運動費の余剰金について総務省選挙課に聞いてみると、「公職選挙法上、選挙運動費用の収支に残余が生じた場合の取り扱いに関しては、特段の規定は設けられていない」とのことだ。つまり、公金も費やされている選挙運動資金の余剰金は、どのように処理しようが規制はなく、公開する義務もない。これに問題はないのか、政治とカネの問題を追及しつづけてきた上脇博之・神戸学院大学教授はこう指摘する。
「法律上、不備がある、欠陥があると言わざるを得ない。しかし、その候補者は選挙で当選して公人になるわけなので、政治的には説明責任は残ると思います。余剰金がある場合には、その処理まで誠実に収支報告するという姿勢が求められる。主権者・国民に説明責任を果たそうという気持ちがある人は、あと処理についてもちゃんと『政治団体に寄附しました』とか収支報告書に書くのが本来の説明責任を果たすあり方だと思います」
法的な縛りはないとはいえ、余剰金を寄附した団体に戻したり、収支の公開が義務付けられている政治団体に寄附するなどして、選挙後の使途を明確にしている政治家もいる。余剰金の使い途が公にされないとどんなことが起こり得るのか、上脇教授は以下のように指摘する。
「報告義務がないから、場合によっては個人の懐に入れるとか、実は選挙で裏金として使って、でも買収したと書けないので余剰金にしているという場合もあるし、その後の政治の裏金にするという場合もあり得ますよね。個人が自由に使えるお金なので後援会の人たちを接待するとか、そういう危険性もある」
竹詰参議院議員の場合、どうなのか。収支報告書を調べてみても、電力総連政治活動委員会などに竹詰仁氏からの寄附(返金)はない。「竹詰ひとしを支援する会」への寄附もない。つまり寄附者へは返していないし、政治団体に寄附してもいないということになる。
一二〇〇万円を超える余剰金は、どうなったのか。竹詰仁参議院議員に取材した。取材依頼を出したのは二〇二五年一一月一〇日、回答期限は一週間後の一七日に指定した。期限の一七日、秘書から回答をのばしてほしいと連絡があり、取材は一一月二六日に行なわれた。
竹詰氏は今回の余剰金について以下のように発言した。
「私の三年前の選挙の時の政治資金について残金が残っているのではないかという御指摘は、まったくそのとおりでございます。収支報告書を出した後に実際には支払っているお金があった。それを出し直していなかった。その上で、さらに残金が残っているということで、残金が今どのようになっているかというのをご説明します」
秘書の説明によれば、選管に提出した選挙活動に関わる収支に約五八万円の修正があった。そしてそれ以外に、三八六万円余りの未記載の支出があったという(表3)。これは、実際には、収支報告書を提出する前に竹詰氏側の口座から出金されていたが、領収書が手元に届くのが遅れたため、収支報告書には記載されず、訂正されないままになっていた。秘書は、この経過についてこのように話した。

「当然、領収書が届いた時点でやるべきだったが、やっていなかった」
この三八六万円については、私の取材への回答期限が延ばされている間の二〇二五年一一月二一日に総務省に対して修正を行なったという。
この三八六万円を除いても九一三万円以上が余る。この余剰金は、選挙後、三年以上にわたって、放置されたままだったという。余剰金は、もともと竹詰氏個人に対して、その選挙運動のために寄附されたものだ。竹詰氏はこの余剰金について知っていたのか。竹詰氏は、こう答えた。
「私は銀行の通帳もキャッシュカードも持ってない。事務方が預かっているので、こうなっていること自体を私は知らなかった。金額も収支も含めて、私はいっさい管理せず後援会が管理していた。選挙のあと、別の請求があったということ自体も知らなかった」
竹詰氏が言う「後援会」とは、「国民民主党参議院比例区第二総支部」のことで、ここが選挙実務を取り仕切っていたという。だが、第二総支部の代表者は竹詰仁氏本人だ。上脇教授は、こう指摘する。
「自分が政党選挙区総支部の代表ですから、本人が会計責任者を監督してお金の管理をさせないとダメですね」
約九一三万の余剰金は、総務省に三八六万円の修正を行なった同じ日、竹詰氏がもう一つ持つ政治団体「竹仁会」に寄附という形で移された。
選挙運動費が使用できるのは選挙期間に限られ、使用目的も選挙運動に関連することに限定されている。選挙運動費は、選挙の公平性の確保のため、一般的な政治活動費と違い厳しい管理が義務付けられている。その中には税金である政党助成金を使っている国民民主党からの寄附もある。
今回の取材がなければ、九一三万円余りの余剰金は、どのような使い方をされても、まったく明るみに出ないお金として国会議員の手もとに残されたままだった——あるいは別の形で使われていた——ということになる。
これまで見てきたように電力総連は、自らの組織を代表する候補者を国民民主党から立て、全国各地の電力労組組合員の協力のもと、票も資金もほぼ丸抱えで選挙戦を闘い、参議院に議席を確保してきた。そして、国のエネルギー政策、原発政策に大きな影響を与える力を保持してきた。
原発差止訴訟や東電株主代表訴訟などに取り組んできた海渡雄一弁護士は、電力総連の影響力について語る。
「電力総連は、連合の中で非常に大きな力を持っている。野党の中で国民民主党も立憲民主党も連合の支持がなければ選挙を戦うことは難しい。立憲民主党の中で原発に批判的な意見を持つ議員も、連合、電力総連の意向を忖度し、原発に批判的な意見を公表しない。それが野党陣営において、脱原発が共通政策にならない最大の原因です。電力総連はいわば野党陣営に送り込まれた原子力ムラの橋頭堡と言えます。この問題に向き合わずに国会で脱原発エネルギー政策への転換を進めることは難しいと思う」
電力総連が活動するのは、国政の場だけではない。全国にはりめぐらされた電力総連のネットワークは、地方の政治、特に原発立地・周辺自治体の原発政策を左右する力をも持つに至っている。(次号につづく)




