特集「軍拡からの脱出」(2026年1月号)
シリーズ「高市軍拡の問題点」(2026年1月号)
2025年10月21日、日本の憲政史上初の女性総理大臣となる高市早苗内閣が発足した。同24日には国会で所信表明演説を行ない、その中で、2022年12月に岸田文雄内閣が閣議決定したいわゆる「安保関連三文書」を2026年中に改定する方針を示し、あわせて防衛費のGDP比2%への増額を今年度中に前倒しで行なうことを明らかにした。本小論では、安保関連三文書のこれまでの経過と問題点について若干の考察を行なう。
安保関連三文書とは
日本周辺の安全保障環境が戦後もっとも厳しい状況にあるとの認識の下で策定された安保関連三文書は、①「国家安全保障戦略」、②「国家防衛戦略」、③「防衛力整備計画」から構成されている。
①は「国の安全保障政策に関する最上位の政策文書」であり、従来の外交防衛だけにとどまらない、経済安保、サイバー、宇宙、情報といった様々な分野での安全保障に関する今後おおむね10年間の「戦略的な指針」となるものとされる。2013年12月に第2次安倍晋三内閣の下で初めて策定されたものを改定し、「戦後のわが国の安全保障政策を実践面から大きく転換する」ほどのバージョンアップを加える内容となっている。
②は1976年以来6回策定されてきた「防衛計画の大綱」を改定・改称し、やはり今後おおむね10年間の日本の具体的な防衛目標、そしてそれを達成するためのアプローチ(日米同盟や同志国との連携等)と手段を包括的に示すものとされる。
③は1986年以来おおむね5年度ごとに策定されてきた「中期防衛力整備計画」を改定・改称し、②にもとづき日本が保有すべき防衛力の水準を示し、それを達成するための中長期的な整備計画を定めたものである。具体的には、2027年までの5年間で防衛費を総額43兆円規模にまで拡大し、おおむね10年後の自衛隊の体制と今後五年間で整備予定の主な整備品の内容を明らかにしている。
いずれにせよ、この三文書の策定は、2014年7月の安倍政権による集団的自衛権一部容認の閣議決定とそれにもとづく2015年9月の安全保障関連法の制定と並んで日本の防衛政策における重大なエポックメイキングとなり、これにより憲法9条の形骸化をさらに推し進める新たな展開路が開かれたことになる。
「反撃能力」の問題性
安保関連三文書の内容は多岐にわたるが、その中でも大きな柱となるのが「反撃能力」(いわゆる「敵基地攻撃能力」)の保有に向けた動きである。













