【座談会】戦争準備を地域で止めるために

2025/03/04

特集・軍事化される西日本」のほかの記事はこちら

坂本真有美:3・11ゆいネット京田辺
小嶺博泉:与那国で畜産業を営む。元与那国町議会議員。
新田秀樹:市民団体「ピースリンク広島・呉・岩国」広島世話人。
和田香穂里:馬毛島基地反対住民訴訟原告団長。西之表市議会議員。
杉原浩司:武器取引反対ネットワーク(NAJAT)代表。
(司会)川崎 哲:平和構想研究会代表。ピースボート共同代表。核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員兼会長。

安保政策の転換後、何が起きているのか

川崎 本日は各地からお集まりいただき、ありがとうございます。

 2022年の12月16日、岸田政権のもとで、国家安全保障戦略などのいわゆる安保3文書が閣議決定されてから2年が経ちました。日本の防衛安保政策の転換点となったこの安保3文書は、軍事費を倍増させ、武器輸出の全面解禁への道を開き、敵基地攻撃能力をもって、米軍と一緒になって戦争できる国にしていくという政策転換でした。

 この政策転換のもと、現在、西日本を中心とした日本各地で基地増設やミサイル部隊の配備、弾薬庫の整備、さらには「有事」を想定した演習、米軍などとの共同訓練など、具体的な戦争への準備が進んでいます。

 私はふだん東京におりますが、そうした動きが全国的に報道されているとは感じられません。そのため、平和問題に取り組む市民の間でも、各地の現場で何が起きているか共有されていません。 そこで本日は、各地の状況を報告していただき、こうした危険な動きを止めるため市民に何ができるのか、何が必要なのかということを討論していきたいと思います。

声を出しにくくなる島の状況

小嶺 与那国の小嶺と申します。日本最西端として知られる与那国島は、東京から2000キロ離れた国境の島で、台湾まで111キロです。

 もともと与那国町は、平成の大合併の方向には流されず、自分たちの足で立つ島を、という「自立ビジョン」を掲げてきたのですが、それに反して2008年頃に町議会からの要請という形で自衛隊誘致が始まり、あれよあれよという間に加速し、現在に至っては、情報部隊だけでなくミサイル配備という状況まで進んでしまっています。議会の要請は「安全の担保と経済効果」を目的としたのでしょうが、現況では地場産業は疲弊し、地元人口は減少の一途です。あげくのはて、「台湾有事」では国民保護のもと住民は島から出ていくことになるとまで言われています。

 実は、私はもともと自民党の議員です。それはあえてイデオロギー的な見解ではないと主張したいのです。いま与那国で起きていることは、民主主義の危機なのではないかと思っています。島の人間が島のことについて声を上げることが難しいという状況、これが一番危険なことだと思うんですね。実際、与那国では“親方日の丸”には逆らえないという状況ができてきています。

 2000年に地方分権一括法という法律が施行され、地方の声は地方から届ける、地域のことは地域で決めると、国と地方の仕事のすみ分けが法的に定められました。与那国の自立ビジョンはその中で作られたのです。しかし、今の与那国ではその「地域からの声」として、「国境の島が危ない」というメッセージが発されています。全国のニュースでも与那国の糸数町長の発言が報じられているのを見た方も多いのではないかと思います。彼が地域を代弁して「国境の島を助けてくれ」と国に要請している形になっています。それが与那国の声だと。しかし、これは島の多くの人間が考えていることとは違います。今日は皆さんと一緒に考えながら、島の状況を公にしたいと思っています。

新基地建設が島の自治を破壊

和田 鹿児島県の南にある種子島(西之表市)から参加しています。現在、種子島からすぐ近くの無人島である馬毛島に大規模な自衛隊基地が建設されています。

 かつては緑豊かな島で、固有種のマゲシカなど独特の生態系を持っていた島でしたが、2011年の2+2(注:日米安全保障協議委員会、日米の外務・防衛閣僚による会合)で、米軍の空母艦載機離着陸訓練の移転候補地とされました。その後、陸海空自衛隊の訓練拠点、さらには戦時の展開拠点、つまり戦争のための拠点として基地建設が進められています。馬毛島は開発業者が99.7%の土地を持っていて、売り渋っていたのですが、国の鑑定評価額で45億円とされていたものを、防衛省が160億円で購入しました。これは国会の審議を経ることなく、辺野古の米軍新基地建設関連予算から流用されたものでした。

ここから有料記事

latest Issue

Don't Miss