辛淑玉(しん・すご)
ヘイトスピーチに抗する市民団体「のりこえねっと」共同代表。主な著書に『怒りの方法』(岩波書店)、『せっちゃんのごちそう』(NHK出版)ほか多数。
仁藤夢乃(にとう・ゆめの)
一般社団法人Colabo代表。1989年生まれ。主な著書に『難民高校生 絶望社会を生き抜く「私たち」のリアル』(英治出版)、『当たり前の日常を手に入れるために 性搾取社会を生きる私たちの闘い』(影書房)など多数。
大衆からの暴力
辛淑玉(以下、辛) 仁藤さん、そしてColaboは今、ミソジニストから凄まじい攻撃を受けています。
Colaboの被害は甚大で、いくつもの裁判もやっています。今日は、そんな状況にあるにもかかわらず、性被害を受けた女性たちを支えつづけ、共に生きつづけている仁藤さんからお話を伺いたいと思います。
仁藤夢乃(以下、仁藤) 2022年からColaboについて「会計不正」などのデマを拡散している(自称ユーチューバーの)暇空茜が先ごろColaboに対する名誉毀損の罪で在宅起訴されましたが、そのタイミングでまた私たちへの攻撃はひどくなっています。殺害予告はもちろん、レイプ予告、爆破予告なども。
これらは十数年前から受けつづけているものですが、ここにきてますます過激化しています。私個人やColaboのアドレスには万単位でいやがらせのメールが届きます。
辛 大衆からの暴力は、本当にキツイ。
仁藤 あらゆる形の暴力に晒されている感じです。SNSでデマが拡散され、そのデマを信じた人たちが物理的な暴力に走り、Colaboのバスカフェを傷つけたり罵倒したり。街を歩いてる時に男たちに囲まれてカメラを突きつけられることもありますし、自宅やシェルターの場所を特定されたり、注文していないモノが何百件も送り付けられてきたり。それが日常となっているので、もう怖いとも思えなくなっています。常にそういう緊張状態に置かれています。
私たちは2014年に、当時「JKビジネス」といわれる性搾取の問題について、Colaboとつながる少女たちと一緒に声を上げました。当時は今以上に少女への性搾取の実態が理解されておらず、児童相談所などの福祉機関や学校、警察でも少女の「非行問題」として扱われていました。
辛 少女たちの「非行」をいかにして矯正するか、という話にされていた。
仁藤 それに対して、なぜ少女たちがそこに至ったのか、その背景を伝えたかったのです。少女につけ込み、商品化する業者の男たちがいて、そしてそれを買う消費者がいるということを。そのときから反発は強かったです。当事者たちが性売買や性暴力被害の実態について明らかにしたときは、とくに。それは私たちの話が事実だから、彼らはデマで対抗するしかなかったのかな、と。そしてそれは、多くの男性たちが性搾取の利益を享受してきたからだと感じます。
