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編集後記
枕草子ではないが、春夏秋冬のすべてが好きだ。だが、夏という季節は特別だ。梅雨空から一転して青空が広がり、夏休みが来る。
だが、気候変動の急加速により、その期待と楽しみより、苦痛が大きくなりつつある。寝苦しさ、熱中症警戒アラート、線状降水帯。そして、このまま私たちが対処に失敗し、壊れた地球環境を子どもたちに残すことになるかもしれないという恐怖。
今年1月の世界平均気温は産業革命前の水準を1.75℃上回った。日本では今年、平均気温が六月は平年より2.34℃、七月は2.89℃、高かった。3年連続で観測史上最高の平均気温を更新した。2024年は大気中の二酸化炭素濃度が観測史上最速で上昇した年だった。
あらゆるデータが、最悪の状況に向かって人類が(すべての動植物の生命を巻き添えにしながら)最悪のシナリオに突き進んでいることを示している。だが、こうした事態をめぐる議論は、これほどの酷暑のさなかでも、ヒグマ襲撃をめぐるニュースの10分の1も見られない。参院選でもほとんど議論されなかった。これが最大の悲劇だろう。
参院選で躍進した参政党の政策を見てみると、気候変動には「科学的な議論の余地がある」として、パリ協定からの離脱と炭素目標・再エネ推進の撤回を掲げる。米トランプ政権のモノマネなのか、それとも気候変動を否定する陰謀論をまともに信じているのか。いずれにせよ、こうした政党が、特に若い世代で支持を増やしている背景と文脈について冷静な把握が必要だろう。その点で、今号特集の藤原辰史氏や田辺俊介氏などの論考、若い世代の座談会は、議論の出発点となるテキストだ。
今号では、ガザで進行するイスラエルによるジェノサイドについて、きわめて重要な内容を示す国連特別報告者のF・アルバネーゼ氏の報告書を軸に特集を組んだ。今号には間に合わなかったが、同氏のインタビューも次号以降で掲載予定だ。
飢饉の発生が認定されたガザの状況は深刻だ。イスラエルはガザに残るジャーナリストを狙って殺害するという挙にも出ている。ガザを伝えつづけることで、殺されたジャーナリストを悼み、暴挙に抗いたい。
環境活動家のグレタ・トゥンベリさんが、8月末から再び船団を組んでガザをめざす。「社会正義なくして気候正義はありえない」というグレタさんの姿勢に共鳴し、連帯する。
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