〝自己都合解散〟は抑制できるか?――解散権濫用に歯止めをかける法制度の検討

楊井人文(弁護士ジャーナリスト)
2026/02/07

抜き打ち的解散

 高市内閣が通常国会の冒頭で衆議院を解散した。一月九日に読売新聞が「解散検討」と報じた時点で与党内からも「なぜ今?」という声が出てくるほど、誰もが予想外の抜き打ち的な解散だった。しかも、解散から投票日まで一六日間の選挙日程は戦後最短となった。

 野党からは「解散により政治空白をつくることは、国民生活を軽視するもので、全く大義がない」(野田佳彦・立憲民主党代表=当時)、「自分勝手な、高い支持率に頼って議席の多数だけ取ればいいと。まさに道理のない解散に打って出ようとしている」(田村智子・日本共産党委員長)などと批判が噴出。メディアも「国民生活より自らの権力基盤の強化を優先した『自分ファースト解散』というほかない」(朝日新聞社説)などと厳しい指摘が相次いだ。

 だが、こうした批判は近年、解散のたびに起きている。「支持率が高いうちに」と政局的判断で決めていると疑われる事例が相次いでいるのだ。

解散の濫用

 前回、石破茂内閣の発足直後に行なわれた解散・総選挙(二〇二四年一〇月)。その前の岸田文雄首相が内閣支持率の長期低迷で辞任した後、小泉進次郎氏らが総裁選に立候補してメディアの注目の的となる中、「できるだけ早期に衆議院を解散する」と表明。総裁選は石破氏が勝利したが、党内の早期解散論に押されるがまま、組閣から八日後の解散を決めた。衆議院議員の任期はまだ一年以上あったが、「就任直後の刷新感が強く、支持率が高いうちに」という狙いだったとみられる(結果は目論見が外れ、与党過半数割れに)。

 前々回、岸田内閣の解散(二〇二一年一〇月)も、国会から首班指名を受けて組閣した当日に発表された。衆議院議員任期満了まであと少しだったため、久しぶりの任期満了に伴う総選挙になるかとみられていたが、解散から投開票日まで一七日間という戦後最短(当時)の選挙日程を一方的に決め、驚きをもって受け止められた。

 その前は安倍内閣が自ら「国難突破解散」と名付けたが、臨時国会冒頭解散だった(二〇一七年九月)。野党が三カ月前に出した臨時国会召集要求に応じず、「森友・加計疑惑隠し」と言われたが、民進党新執行部にスキャンダルが発生したことや小池百合子東京都知事が新党結成に向けて動き始めたこともあり、「野党の準備が整わないうちに」決断したとみられている。

「首相の専権事項」の誤りとメディアの責任

 こうした打算的で党利党略的な解散権の行使が相次ぐ背景には、「解散権は首相の専権事項」というフィクションを広めてきた主要メディア、とりわけ政治ジャーナリズムにも責任がある。解散権は「内閣」にあり、首相の独断専行で決められるものではない。

楊井人文

(やない・ひとふみ)ベリーベスト法律事務所弁護士。慶應義塾大学卒業後、産経新聞記者を経て、2008年に弁護士登録。ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)発起人。共著『ファクトチェックとは何か』(尾崎行雄記念財団ブックオブザイヤー受賞)。

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