1月10日、ベネズエラ・ボリーバル共和国のマドゥーロ大統領は三期目となる大統領就任式を行なった。
この就任式を、ロイター、CNN、BCC、AP、EFEなど欧米の大手マスメディア、朝日、毎日、読売、日経、赤旗など日本のマスメディアも、基本的に次のような論調で報じた。
①投票所ごとの得票数など詳細が明らかにされておらず、国際社会では選挙結果への疑問が依然存在する、②マドゥーロは、民主的に選出された大統領の正統性を欠いている、③選挙不正を訴える野党を弾圧し、独裁化を強めている、④選挙の結果は、野党のエドムンド・ゴンサーレスの勝利が正当であり、彼が正式な大統領である――。
これらの報道が事実にもとづかないことは、筆者は折に触れて指摘してきたので、ここでは繰り返さない。
孤立する民主統一プラットフォーム
マドゥーロ政権を批判する野党「民主統一プラットフォーム」の実質的指導者マリア・コリーナは、就任式前の9日、100万人の抗議集会を開催すると宣言していたが、実際には数千人にとどまった(La Jornada, 2025年1月11日)。筆者も当時、首都カラカスで現地の報道に接したが、各地で数百名程度の集会が行なわれている様子が報じられていた。同党の指導者エドムンド・ゴンサーレスは、同じ1月10日にドミニカ共和国からSNS上で自ら大統領であると宣言した。欧米メディアでは反体制勢力の代表として扱われる民主統一プラットフォームだが、ベネズエラ市民の大きな支持は得られていないようだ。
マドゥーロ大統領は10日の国会議員と外交団を前にした公式の就任式の後、11日、カラカスの大統領宮殿前で一般市民に就任挨拶を行なった。筆者も参加したが、街路を支持者数千人が埋めた。ベネズエラでは2013年に一般市民の銃の所持を全面禁止する政策が発表されたが、違法な銃が大量に流通している。マドゥーロが一般市民の前で演説をするのは、国内の支持に対する自信の表れでもあろう。
参考までに、現在、べネズエラの政党配置図は次のようになる。
◎民主統一プラットフォーム:民主統一テーブル、新時代党、正義第一党など9の政党により構成
◎人民意思党(VP)
◎鉛筆前進進歩党
◎全国民主連盟党
◎ベネズエラ・ファースト党
◎変革の党
◎解決党
◎中心党:ベネズエラ共産党、レデス党が支持
◎民主行動党(AD)
◎大祖国戦線:マドゥーロ与党。ベネズエラ社会主義統一党など12政党で構成