【連載】Sounds of the World(第7回)ジャー・ナイン

石田昌隆(フォトグラファー)
2024/12/05
ジャー・ナイン(2024年10月31日)©︎石田昌隆

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 ジャー・ナイン。凜とした射貫くような表情、独創的なセンスのファッション、この女性は「レゲエ・リヴァイヴァル」と言われる2010年代からのムーヴメントを代表するミュージシャンである。

 エリカ・バドゥやローリン・ヒルらによるネオ・ソウルは、旧来のソウル・ミュージックに、ジャズ、ファンク、ヒップ・ホップなどの要素が加わった新しい音楽だった。ジャー・ナインのレゲエ・リヴァイヴァルは、1970年代のルーツ・レゲエを基にしつつも焼き直しではなく、ダブ・ポエット、ジャズ、ファンクなどの要素を加えて、今現在の感覚でジャマイカの歴史と文化を捉え直し、ユニヴァーサルなメッセージを導き出している音楽である。

 写真は10月31日、「STANDARD WORKS presents RUNNING STEADY vol.2 at THE GARDEN HALL」というイヴェントで初来日したジャー・ナイン。ライヴ本番の直前に衣装を着たところを、バックステージに設営した簡易スタジオのセットで撮影した。

 ジャー・ナインという芸名は、ジャニーン(Janine Cunningham)という本名に由来しているが、ルーツ・レゲエのミュージシャン、ボブ・マーリーなどもよく言うラスタファリアンの台詞「ジャー・ラスタファーライ」の「Jah」と「9」を組み合わせたものでもある。

 ラスタファリアンの歴史は、マーカス・ガーヴィーという、主に1910年代から20年代半ばにかけてアメリカで活躍したジャマイカ生まれの黒人解放運動家が、演説のなかでたびたびこのような発言をしていたことがきっかけとなって生まれた。

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石田昌隆

1958年生まれ。フォトグラファー。新刊『ストラグル Reggae meets Punk in the UK』が出ました。1982年にニューヨークでザ・クラッシュを撮影した写真に始まり、2023年にひとりでカメラ機材やテントや寝袋を持って飛行機に乗り、ロンドンと音楽フェスが行なわれたイースト・サセックス州を訪ねたときまで41年間の記録です。

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