(翻訳=甘糟智子、監修=早尾貴紀・根岸陽太)
※特別報告者は国連人権理事会に任命された個人の独立専門家で、特定の国における人権状況やテーマ別の人権状況について調査、監視、報告を行なう。アルバネーゼ氏はイタリア出身の研究者で、イスラエルによるガザ攻撃を強く批判してきた。2025年7月10日、米国はアルバネーゼ氏に制裁を科すと発表。国連は撤回を求めている。
※国連人権理事会のパレスチナ担当特別報告者、フランチェスカ・アルバネーゼが2025年10月20日に国連総会に提出した特別報告書を、前回の報告書「占領経済からジェノサイド経済へ」(本誌2025年10月号掲載)に続いて訳出し紹介する。なお「方法論」と「法的枠組み」について記述したⅡ節とⅢ節は割愛した。
【関連】アルバネーゼ報告を読む
・「占領経済からジェノサイド経済へ――パレスチナ地域における人権状況に関する国連特別報告者報告書〔抄訳〕」フランチェスカ・アルバネーゼ
・「世界はこの報告書を受け止められるか――アルバネーゼ報告の射程と意義」早尾貴紀(東京経済大学教授)
・「国際人権法へのあからさまな攻撃を前に沈黙という選択肢はない――トランプ政権による国連特別報告者に対する制裁」小坂田裕子(中央大学大学院法務研究科教授)
Ⅰ 序文
1 今や完全なジェノサイドへと激化したイスラエルによるパレスチナ領の長期にわたる違法占領は、他の国家の直接的な関与・支援・援助がなければ維持され得なかった。いくつかの第三国による軍事的・政治的・経済的支援と、イスラエルに責任を問わない消極的な姿勢が、占領下のパレスチナ領域に入植者植民地主義に基づくアパルトヘイト体制を根づかせることを可能にした。これによりユダヤ人入植地の拡大、パレスチナ人の家屋の破壊、パレスチナ人に対する移動の制限、そしてパレスチナ人の生命の喪失や抹消が進行している。2023年10月以降、イスラエルはかつてない水準にまで暴力を激化させている。
2 本報告書はこの共犯関係を踏まえ、パレスチナ人に対する進行中のジェノサイドは、国際社会が可能とした犯罪として理解されねばならないことを示す。多くの国家、特に西側諸国は、イスラエルによるジェノサイド作戦を促進し、正統化し、ついには常態化させてきた。第三国はパレスチナの文民を「人間の盾」とみなし、ガザに対する大規模攻撃を「文明と野蛮」の戦いとして描くことにより、イスラエルによる国際法の歪曲と植民地主義的レトリックを再生産し、ジェノサイドにおける自らの共犯を正当化しようとしている。
3 本報告書は、第三国がイスラエルによる違法占領およびパレスチナ人に対するジェノサイドに提供してきた支援および援助に焦点を当て、それらを外交・軍事・経済・「人道」の4つの分野に分けて明示する。いずれの分野における支援も、現在も続くイスラエルの国際法違反にとって不可欠である。外交的な取り組みは、イスラエルによる占領を常態化させる一方、恒久的な停戦の実現には至っていない。主に米国および欧州諸国による大規模な軍事支援、協力、武器移転は、イスラエルによるパレスチナ人に対する支配を可能にしてきた。また、これによりイスラエルが人道支援を阻害し、パレスチナ人を集団として破壊することを意図した生活条件を課すことが可能とされてきた。さらに経済協力は、違法占領とジェノサイドから利益を得てきたイスラエル経済を支えてきた。
4 アパルトヘイト下の南アフリカ、ローデシア[現ジンバブエ]、ポルトガル、その他の植民地体制に対して実施され成功した措置は、国際法に力が与えられることで、正義と自己決定権を確保できることを示している。今日、第三国は、今なお入植者植民地主義による暴力とアパルトヘイトを行なう国家に対し、これらの措置およびその他の措置を適用する法的・道徳的義務を負っている。国際裁判所の明確な命令にもかかわらず、第三国がイスラエルの長年にわたる国際犯罪に対する責任追及を怠っていることは、国際社会の明らかな二重基準を示している。〔……〕





