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パワハラ告発――県議会でも質疑
「西の兵庫県知事、東の茨城県知事。より強烈なのは東のほうだ。大井川和彦県知事のパワハラを訴える声は随所で耳にするところ。知事が県庁の雰囲気を殺伐とさせ、何かあっても職員は口をつぐむようになった。知事の責任は大きい」と、いばらき自民党の重鎮、常井洋治県議が憤る。
本連載の第1回冒頭で、「兵庫県知事のパワハラ疑惑報道から、茨城県知事が職員に対して急に丁寧になった」と紹介した。その掲載号が刊行された2024年12月上旬、県庁の幹部職員を名指しし、そのパワハラを告発する文書が県議らにいっせいに送られた。
筆者が複数の県議から入手した告発文書の主な内容は、▽県庁の幹部職員が知事からの評価を上げるために部内職員に過大なノルマを課し、資料作成指示を繰り返している、▽それによって職員が疲弊してメンタルを病んでおり、療養休暇や退職者が相次いでいる、▽過大な指示によって心身ともに疲弊した職員が脳出血により突然死した――というもの。内容について担当部署に問い合わせると、次の返答があった。

「(当該の幹部職員による)パワハラがあるとの認識はありません。今年度のメンタル疾患による休職者はゼロで、年度途中の退職者は2人います。退職理由は個人情報となるため言えません。亡くなった職員がいるのは事実ですが、病名などは個人情報になるため言えません」
告発文書には、ある管理職がメンタル不調で休んでいるとも記載されていたが、個人が特定できてしまうとして回答はなかった。だが、告発文書は、その管理職を指し「県庁内でも優秀で抜擢されている職員で、このような将来ある職員が、知事へのゴマすりのために潰されてしまうという事態」に「残念でなりません」と記され、議員らに向けて「このような事態を打開できるよう、先生の力をぜひお貸しいただければ幸いです」と結ばれている。
さらに、こうした茨城県庁内の事態が深刻であることが、県議会でも明らかにされた。前号で、2024年10月20日に県庁で秘書課の職員が死亡したことについて記したが、12月10日、立憲民主党の玉造順一県議が県議会の総務企画委員会で事実関係について問いただしたのである。
これに対して県側は、前回記事と同様に、死亡した総務部の職員がいることは認めたが、職務に起因したものかどうかについて、ここでも「個人情報」を理由に答えなかった。この県議会での質疑を受けて、新聞各社も報じる事態となっている。
関係者によれば、亡くなったのは副知事を担当する秘書(係長)で、自殺と見られている。県庁職員の間では、「性格が明るく優秀な人材だったので、花形の秘書課に抜擢された。お子さんも小さいだけにショックだ」と動揺が広がっている。また、ある県庁職員は「知事を気にする上司からのプレッシャーがきつく、『死んだら楽になるな』と思ったことがありました。だから、秘書が自殺したのではないかと聞いて、その状況が目に見えるようです」と話した。筆者の取材に対し玉造県議は「亡くなった原因について県は調査すべき。原因が職務にあれば公務災害の手続きを行ない、二度と同じことが起こらないよう対応を求めたい」と話した。