平和主義を支えた立憲的秩序の危機
2026年現在、戦後日本の平和主義を支えてきた二つの立憲的な秩序が崩壊の危機に瀕している。
その一方は、国内秩序の根幹にある日本国憲法である。2014年の集団的自衛権の行使容認を決めた閣議決定以降、その規範性の後退は加速している。専守防衛政策の転換と敵基地攻撃能力の構築、武器輸出の解禁など、現行憲法のもとでは行なえないとされてきた政策が次々に実行に移されてきた。高市政権による憲法改正の動きは、その延長線上にある。
もう一方の危機は、国際秩序の枠組みとなってきた国際連合憲章(国連憲章)に関わる。その要とされる武力行使禁止規範(2条4項)に関して、大国やその同盟国による重大な違反が続いているにもかかわらず、国連もその他の主体も、甚大な被害を生みつづけている違法な行為をやめさせることができずにいる。
2022年のロシアによるウクライナへの侵略では核兵器使用の可能性が懸念され、2023年から25年まで続けられたイスラエルによるガザ攻撃では国際司法裁判所がジェノサイド防止を命じるなど、逸脱してはならない「強行規範」の重大な違反が相次いで発生した。
加えて、2025年から26年にかけて強行された米国とイスラエルによるイラン攻撃は、周辺地域だけでなく世界的な危機をもたらしている。さらに米国はベネズエラへの武力侵攻を石油利権のために行なったことを隠そうともせず、グリーンランドやキューバに対しても米国政府首脳による威嚇的な発言が相次いでいる。これらの事象は、戦争のない平和な世界を希求してきた法秩序の根本規範が無意味化されていく現在の世界を象徴している。筆者は「立憲的秩序崩壊の危機」と表現したが、「すでに崩壊した」と断定的に語る論者も少なくない。
なぜ危機を迎えているのか
それではなぜ、いまこの時代になって、これらの平和を求める法規範群が衰退し崩壊したように見えるのだろうか。




