「資金COP」
猛暑、洪水による甚大な被害が日常的に発生し、北日本でフグなど南方の魚が大漁となるなど、地球温暖化による変化は、日常の生活の一部となってきた。今も温室効果ガスの排出は増加を続けており、もはや地球の平均気温の上昇は、なんとか人類が温暖化の悪影響と共存可能と考えられる1.5℃を超えるリスクが目前に迫っている。
その中で、温暖化対策の国際協定であるパリ協定の国連会議COP29会議が、11月11日から24日、中央アジアに位置するアゼルバイジャン共和国の首都バクーで開催された。
今回のCOP29の一番の焦点は、途上国への資金支援額を決定することにあったため、「資金COP」と呼ばれていた。
「途上国への資金支援が焦点」と聞くと、関心が薄れるかもしれない。しかし実は世界全体の温室効果ガスの削減を進めるために、この途上国支援額の規模が今後拡大し継続していく見通しこそが必須なのである。
というのは、パリ協定において、途上国が提出している削減目標は、自力で削減する分と、資金と技術支援があれば追加できる分と、2つに分かれているケースが多いからだ。すなわち世界全体の削減量を強化していくには、途上国への資金支援の拡大と継続が不可欠なのだ。
結論から言うと、今回のCOP29で、資金額については前回よりも増額はされたが、温暖化の甚大な被害に苦しむ途上国の要求水準からは程遠く、最低限の合意がなされたのみとなった。
しかし、アメリカで国際協調に懐疑的なトランプ政権が誕生するのを前に、国連における多国間合意がなんとか成立し、世界全体で連携して地球温暖化対策を協働していく体制が機能していることを再確認できた点では意義が大きい。

期待された3つのアジェンダ
そもそもパリ協定の究極の目標は、さらなる温暖化の悪影響を避けるために、世界全体の気温上昇を産業革命前に比べて1.5℃におさえることにある。そのためには、2050年に世界の温室効果ガスの排出量をネットゼロにすることが必要である。そのために何より重要なのは、2035年に向かうこの10年の間に、世界の排出量を半分以上削減することである。実は今もパリ協定に各国が提出している削減目標では、3℃程度も世界の平均気温が上昇すると予測されており、削減目標の強化は喫緊の課題である。
そのため、今回のCOP29の注目点は主に3つあった。1つ目が前述の気候資金に関する新規目標の設定。2つ目は、野心的な2035年の削減目標提出に向けた機運の醸成であった。そしてもう1つはカーボンマーケットのパリ協定ルールを定める交渉である。
いずれも2035年に向けた世界全体の排出削減を進めるために不可欠の項目である。今後さらなる地球環境の悪化を防ぐために、世界200カ国でいかなる交渉が繰り広げられたか、説明していきたい。