2024年12月24日、ありがたくないクリスマスプレゼントが届いた。
厚生労働省に設置された「労働基準関係法制研究会」(座長:荒木尚志・東京大学大学院法学政治学研究科教授。以下この研究会を「研究会」という)は、この日、労働基準法などの見直しに関する報告書(以下、この報告書を「報告書」という)を取りまとめた。
報告書は、結論を言えば、労働者の人権にとって極めて重大な害悪を引き起こす内容をはらんでいる。その問題性にはさまざまな内容が含まれるが、私は、労働組合の活動の発展を願って日々労働組合との協働を心がける業務を遂行してきた経験から、とりわけ「労使自治」に関する点に強い関心を持つ。
そこで本稿では、2025年1月14日時点の情報にもとづいて、報告書中の「労使自治」に関する言及、それがなにゆえ提起されてきたのか、狙いは何か、労働者と労働組合、それとともに歩もうとする者がどのように今後活動していくべきかについて若干の考察を述べる。
報告書の「労使自治」論
報告書の問題意識は、次のとおりである。
世の中で、新型コロナなど社会情勢の変化、産業や技術の進展の中で、多様な働き方が浸透し、様々な雇用形態や業務、労働時間で働く者がいる状況となってきた。他方、労働基準法は、制定当時こうした多様な働き方を想定しておらず、一律の規制を設けることで対応できたが、現状はそれに合わなくなってきた。そこで、労働基準法のあり方を根本的に見直すべきである。
それに対応するためということで、報告書では「労働時間法制」や「労使コミュニケーション」についての見直しを提言し、さらに細かく、労働基準法上の「労働者」といった論点ごとに見直しの方向性を整理するものになっている。
本稿で問題にしたい「労使自治論」は、このうち、「労使コミュニケーション」とされるものである。
報告書中、「労使コミュニケーション」に関して論述している部分について重要と思われる記述を抜粋すると、おおむね以下の論述を指摘できる。
① 問題意識
「働き方の多様化、経済情勢や技術の変化の激しさに更に拍車がかかっている。労働基準関係法制については、こうした変化の下でも守るべき原則をしっかりと堅持した上で、法令において定められた最低労働基準としての規制の原則的な水準を守りつつ、多様な働き方を支える仕組みとすることが必要である」(18頁)
② 変革の方向性
「そのためには…労使の合意等の一定の手続きの下に個別の企業、事業場、労働者の実情に合わせて法定基準の調整・代替を法所定要件の下で可能とする仕組みとなっていることも必要となる」
「こうした仕組みが有効に弊害なく機能するためには、それを支える基盤として、労働者が意見を集約して使用者と実効的なコミュニケーションを行い得る環境が整備されていることも必要となる」
労働組合の活性化、組織化とともに、「過半数労働組合がない事業場も含めて、労使ができるだけ対等にコミュニケーションを図り、適正な内容の調整・代替を行うことのできる環境が整備されていることが重要である」(19頁)
③ 具体的変革内容
具体的には次の内容を提案している。(26頁)