特集「軍拡からの脱出」(2026年1月号)
シリーズ「高市軍拡の問題点」(2026年1月号)
進められてきた配備計画
2025年10月20日、「自由民主党・日本維新の会 連立政権合意書」(正確には連立政権ではなく閣外協力というべきもの)が締結された。その中で、「わが国の抑止力の大幅な強化を行うため、スタンド・オフ防衛能力の整備を加速化する観点から、反撃能力を持つ長射程ミサイル等の整備及び陸上展開先の着実な進展を行う」ことが明記された。ここで言及されている「反撃能力」(内容的には「敵基地攻撃能力」と表現すべきもの。ただし、対象は敵基地に限られるものではなく、一般市民にも影響が及びうる)やその確保を目指したミサイル配備計画は、あらたに浮上したものではない。従来から進められてきた方向性を確実かつ加速的に進展させていくことを示すものであった。
ミサイル配備にかかる具体的な道筋は、民主党政権時代の2010年12月に発表された「防衛計画の大綱」の中で、防衛力を高めるために「巡航ミサイル対処を含め島嶼周辺における防空態勢を確立する」と明記されたことに端を発している。これ以降、米国との「一体化」(事実上は自衛隊による米軍の一部化)の視点に立ち、対中国強硬姿勢の文脈から沖縄と九州南部の島々からなる南西諸島を「台湾有事」の名の下で米国の権益を守るための前線(戦場)として位置づける動きが始まり(注1)、南西諸島で自衛隊を集中配備する計画が実行されるようになった。「南西シフト」と呼ばれるものである。
1 青野篤「防衛力の抜本的強化と九州地方への影響」、憲法ネット103編『混迷する憲法政治を超えて』(有信堂高文社、2025年)42頁。
2018年以降は、南西諸島以外の九州地方(大分や佐賀、熊本など)でも、例えば日本版海兵隊と呼ばれる水陸機動団の配備拡大が進められたりすることで、九州全域を対象とする軍事拠点化が図られてきた。その一環として、2019年に南西諸島初となる地対艦・地対空ミサイル部隊が奄美大島(奄美駐屯地、瀬戸内分屯地)と宮古島(宮古島駐屯地)に配備された。
緊張を高めるミサイル配備
臨時国会閉会後の2022年12月26日、岸田政権(当時)は、軍事拠点化をさらに拡大させるための根拠となる「安保三文書」(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画(注2))を閣議決定した。
2 2013年策定の国家安全保障戦略では、日本の安全保障政策の姿勢として軍事に依拠する「積極的平和主義」が打ち出された。2018年策定の「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画(平成31年度~平成35年度)」は、2022年にそれぞれ「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」に変わった。
以後、防衛力整備計画で具体化された通りに、ミサイル部隊(地対艦ミサイル部隊、長射程誘導弾部隊)の保持、各種のスタンド・オフ・ミサイル(一二(ひとに)式地対艦誘導弾能力向上型、島嶼防衛用高速滑空弾、島嶼防衛用高速滑空弾〔能力向上型〕、極超音速誘導弾といった国産ミサイルなど)の量産体制、保存用の弾薬庫の建設などが急ピッチで推し進められるようになった(注3)。2023年の石垣島(石垣駐屯地)での地対艦・地対空ミサイル部隊の配備、2024年の沖縄本島(勝連分屯地)での地対艦ミサイル連隊の配備は、その一環としてなされたものである。
3 安保三文書以後の関連動向については、青野、同上(39-50頁)のほか、三宅裕一郎「今あえて、『軍事によらない平和』を追求することの意義」憲法ネット103編『混迷する憲法政治を超えて』(有信堂高文社、2025年)、吉田敏浩『ルポ 軍事優先社会――暮らしの中の「戦争準備」』(岩波書店、2025年)、飯島滋明「安保3文書と南西諸島の現実」『法と民主主義』592号(2024年10月)21-24頁などを参照。













