【関連】特集:隣人である移民(2025年11月号)

移民女性たちを支える
私が所属しているNGO神戸外国人救援ネットは、阪神・淡路大震災直後に発足した「阪神大震災地元NGO救援連絡会議」の分科会「外国人救援ネット」から、活動が始まった。在住外国人の人権問題に取り組んでいたNGOや個人が集まり、発足当初は、義援金、治療費、弔慰金が一部の外国人に支給されないという「問題」に取り組んだ。在住外国人の人権と生活の保障を目指して、相談・支援活動を続け、活動開始から30年になる。
現在は、毎週金曜日に多言語生活ホットラインを、土曜日と日曜日は「ひょうご多文化共生総合相談センター」を開室している。寄せられる相談は、在留資格、労働、社会保障、教育、DVなど多岐にわたる。また、問題解決のために、入管や役所、法律事務所をはじめ、保育所や小・中学校、病院、警察署、不動産会社など多くの機関等へ、相談員・通訳者が同行支援を行なっている。
1995年に相談活動を開始してから、2024年度までの新規相談を男女別で見ると、2002年度以降、女性の相談者のほうが多い年が目立った(1995年度、98年度、99年度、2000年度、2001年度は男性のほうが多い)。
私が救援ネットで出会った3名の女性(すべて仮名)を紹介したい。
★エヴェリーナさん
エヴェリーナさんは、知人のフィリピン人女性に連れられて、未就学の子どもと一緒に救援ネットに相談に来た。彼女の右の目もとには痛々しい蒼あざができていた。数日前に日本人の夫から右目を殴られたと説明してくれた。
エヴェリーナさんの叔母は、1990年代に「興行」の在留資格で、エンターテイナーとしてフィリピンから日本に来た。働いていたお店で出会った日本人男性と恋仲になり、結婚。エヴェリーナさんは、その叔母の紹介で日本人男性とお見合い結婚をして、日本に来たという。
言葉や文化の違いに加え、同居する夫の両親との関係づくりも難しく、苦労をした。結婚当初はやさしかった夫との関係は悪化していき、ついに暴力を振るわれるようになった。叔母に相談したものの、「あなたが我慢しなさい」と協力的ではなかった。しばらく耐えていたが、顔まで殴られ、このまま子どもを暴力のある家庭で育てることはできないと、知人女性に相談し、救援ネットにやってきた。
救援ネットは、DV被害者支援をしている団体と連携し、親子を保護することに。救援ネットの相談員と通訳者が、エヴェリーナさんと一緒に警察署や法律事務所に相談をしに行き、離婚調停を申し立てた。生活保護の申請をするために区役所に行ったり、引っ越し先探しを手伝ったりした。保育所の申し込みや面接にも同行した。しばらくは生活保護を受けて親子で暮らしていたが、その後エヴェリーナさんが就職。夫が拒んでいたため時間はかかったが離婚も成立し、エヴェリーナさんの収入と元夫からの養育費、一部を補う形の生活保護で、生活を送っている。
★ジェシカさん