※これまでの記事
【第1回】差別と排除のなかで置き去りにされる少女たち
【第2回】「少女を守る」と胸を張るおじさんたちが守りたいもの
【第3回】「家族の助け合い」という言葉が隠すもの
【第4回】メディアはどっちを見てる?
【第5回】怒鳴る相手が違う
【第6回】世界各地の実践と議論に学ぶ
【第7回】罰せられるべきば買う者たち
【第8回】買春男の評価なんていらない
【第9回】生き抜くためのシスターフッド
【第10回】買春処罰だけでは足りない
【第11回】性風俗という暴力
【第12回】続・性風俗という暴力
【第13回】風俗業者側の呆れた論理
売春防止法改正に向けた法務省の「売買春に係る規制の在り方検討会」では、買春処罰の導入に向けた議論が続いている。法務省の説明によると、6月の検討会では、売る側は支援の対象であり犯罪者として扱うのは適当ではないとして、売る側のみが処罰の対象となる売春防止法5条は廃止し売る側を非犯罪化すべきという意見や、買春者がいるから売春が生み出されるという需要と供給の構造からすると、買う側を処罰し、需要を絶つことの必要性を述べた委員もいたという。
現行法では犯罪化されていない「買う側」の勧誘を犯罪化すべきという意見があった一方で、買春の問題を景観や公衆に対する迷惑性、街の風紀を乱すという観点で捉える委員からは、法で規制するのではなく、むしろ非犯罪化し、勧誘行為等は地域の実情に応じて条例で定めるべきだという意見もあったそうだ。
性売買は「景観」や「風紀」の問題か
なぜ、そのような意見が出てくるのか。それは売春防止法の保護法益に関係する。日本には性売買を女性に対する人権侵害として捉える法律がなく、売春防止法は1条で、「社会の善良の風俗」や「性道徳」を守ることを目的としている。その保護法益に基づいて、5条は公衆に対する迷惑性の観点から、「売る側」の勧誘等の行為を処罰対象としている。
性売買の問題を「景観」や「風紀」の問題として捉える委員の中にも、買う側の処罰に前向きな発言をする委員もいる。しかしそれは、「買う側の勧誘行為等によっても、売る側と同じように公衆に対する迷惑性や風紀を害する」ことを理由に、現行法で買う側に罰則がないことを不均衡とするものだ。そうした考えの委員からは、「売る側」についても、様々な事情があったとしても、公衆に迷惑をかける行為をしていることへの処罰は維持すべきという意見もあったという。
性売買の路上勧誘が景観や公衆の迷惑の問題として語られるとき、なぜ女性たちがそこに立っているのか、それにより誰が利益を得ているのかという性売買の構造が見えなくなってしまう。私たちの社会は、性売買を景観や風紀の問題として扱うのか、それとも人権や搾取の問題として扱うのかが今、問われている。



