【連載】歌舞伎町で。(14)見えなくすればいいのか

仁藤夢乃(一般社団法人Colabo代表)
2026/07/05
Group of protesters, mostly women, standing in front of a modern building and holding signs with Japanese text.
法務省の検討会で性売買経験当事者ネットワーク灯火とともに意見書を提出した。2026年5月(提供筆者)

 売春防止法改正に向けた法務省の「売買春に係る規制の在り方検討会」では、買春処罰の導入に向けた議論が続いている。法務省の説明によると、6月の検討会では、売る側は支援の対象であり犯罪者として扱うのは適当ではないとして、売る側のみが処罰の対象となる売春防止法5条は廃止し売る側を非犯罪化すべきという意見や、買春者がいるから売春が生み出されるという需要と供給の構造からすると、買う側を処罰し、需要を絶つことの必要性を述べた委員もいたという。

 現行法では犯罪化されていない「買う側」の勧誘を犯罪化すべきという意見があった一方で、買春の問題を景観や公衆に対する迷惑性、街の風紀を乱すという観点で捉える委員からは、法で規制するのではなく、むしろ非犯罪化し、勧誘行為等は地域の実情に応じて条例で定めるべきだという意見もあったそうだ。

性売買は「景観」や「風紀」の問題か

 なぜ、そのような意見が出てくるのか。それは売春防止法の保護法益に関係する。日本には性売買を女性に対する人権侵害として捉える法律がなく、売春防止法は1条で、「社会の善良の風俗」や「性道徳」を守ることを目的としている。その保護法益に基づいて、5条は公衆に対する迷惑性の観点から、「売る側」の勧誘等の行為を処罰対象としている。

 性売買の問題を「景観」や「風紀」の問題として捉える委員の中にも、買う側の処罰に前向きな発言をする委員もいる。しかしそれは、「買う側の勧誘行為等によっても、売る側と同じように公衆に対する迷惑性や風紀を害する」ことを理由に、現行法で買う側に罰則がないことを不均衡とするものだ。そうした考えの委員からは、「売る側」についても、様々な事情があったとしても、公衆に迷惑をかける行為をしていることへの処罰は維持すべきという意見もあったという。

 性売買の路上勧誘が景観や公衆の迷惑の問題として語られるとき、なぜ女性たちがそこに立っているのか、それにより誰が利益を得ているのかという性売買の構造が見えなくなってしまう。私たちの社会は、性売買を景観や風紀の問題として扱うのか、それとも人権や搾取の問題として扱うのかが今、問われている。

景観条例で取り締まる?

仁藤夢乃

一般社団法人Colabo代表。1989年生まれ。主な著書に『難民高校生 絶望社会を生き抜く「私たち」のリアル』(英治出版)、『当たり前の日常を手に入れるために 性搾取社会を生きる私たちの闘い』(影書房)など多数。

2026年8月号(最新号)

Magazine cover with a white koi fish swimming left against a blue-purple background and large pink vertical Japanese title text on the right side.

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