【連載】歌舞伎町で。(12)続・性風俗という暴力

仁藤夢乃(一般社団法人Colabo代表)
2026/05/06
Lecture hall with a speaker at a podium presenting to an audience in tiered rows, projected slide visible.
国際女性デー(3月8日)に開催された「性売買問題を考えるシンポジウム」で、当事者と専門家が買春処罰と脱・性売買への支援を考えた。(筆者撮影)

性を買うことを当たり前に扱う社会

 日本では、性売買が女性に対する人権侵害であるという認識を多くの市民が持たないまま、性を買うことが当たり前の日常となっている。Colaboが拠点を置く新宿歌舞伎町は、大勢の男たちが年齢を問わず、友達や同僚や先輩と女性を買いに来ることで成り立っている。多くの男性たちの間では、女性を買うことは一つの楽しみであり、恥じることでもない。

 安保法制に反対する運動が盛り上がった10年前、運動に協力する「人権派」弁護士が、男子学生を「彼女に内緒な」と言いつつ、風俗店に連れて行った。男たちが「友情」を深めるための行為として、一緒に女性を買うことで「秘密」を共有し、そこでどんな女性とどんなことをしたのか、買春経験を共有することも日常茶飯事だ。

 一方で、体を売る女性には「非行」のまなざしを向け、「どうしてそんなことをするのか」と男性活動家が少女を責める様子を目の当たりにしたこともある。「人権派」やリベラルの中でこそ女性差別の問題は深刻で、特に、性売買は、構造的な搾取や人権侵害の問題として捉えられてこなかった。

 そんな日本社会では、女性を買うことを「立派な男になるための第一歩」と捉える少年も少なくない。17歳の男子高生が「経験」として、大久保公園で少女を買うという事例もあった。18歳の男性の誕生日祝いに、男友達が風俗をおごることも、めずらしいことではない。性を買うことを人権侵害と捉えず、「大人の男の証」であるかのように扱う社会では、当然のことだろう。

諦めの先――性売買以外の選択肢がない

 コロナ禍以降、少女たちのなかでも、以前に増して性を売ることは当たり前となり、12歳、13歳の少女も増えている。コロナ前は、体を売る生活に「もうこんな生活したくない」「なんで私だけこんな思いをしなければならないの」と涙を流す少女が多かった。しかし、性売買があまりにも当たり前になったここ数年は「うち、今の生活に困ってないよ。これしかできることないし。平気だよ」「周りもみんなやってるし」と語る少女が増えている。

仁藤夢乃

一般社団法人Colabo代表。1989年生まれ。主な著書に『難民高校生 絶望社会を生き抜く「私たち」のリアル』(英治出版)、『当たり前の日常を手に入れるために 性搾取社会を生きる私たちの闘い』(影書房)など多数。

2026年5月号(最新号)

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