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投票を呼びかける活動のその先
みなさんにとって、選挙とはどういうものだろうか? 選挙の期間になると候補者の顔ぶれが街角の看板や選挙公報、メディア報道やSNSでの情報で流れてきて、それをもとに、一番マシな人を選ぶものだろうか。私は2019年にNO YOUTH NO JAPANという若者団体を立ち上げ、「投票に行こう」ということをSNSを利用して呼びかける活動をはじめた。活動を数年続ける中で、周りの友達が投票に行ってくれるようになるなど手応えを感じる一方で、「このまま投票に行くことを呼びかけるだけで、今投票に行っていない人たちは動くのだろうか?」「投票に行ってない人たちが行ったところで、社会は自分が願うように変わっていくのだろうか?」という疑問が自分の中から湧いてくるようになった。
そもそも多くの選挙で、候補者の顔ぶれは、中高年の大卒シスヘテロ男性といった偏った属性の人たちがほとんどを占める。思想や問題意識はそれぞれ違うことも詳しくなればなるほど分かることも増えるが、それでもやはり自分たちが代表されていると感じづらい。そのような選挙で、必死に政党や候補者の違いを説明して、投票に行くことだけを呼びかける活動をしているのだが、それだけを続けても投票に行く人は増えないのではないかと考えるようになっていった。また、私自身も毎回一人の有権者として投票に行くが、いつも「マシな候補者」を選んでいるのであって、この投票の先に自分が望む政治の実現につながるイメージは持てていないと感じていた。
そのような問題意識のもと「投票を呼びかける」という活動の先で、私がはじめた活動が2つある。一つは立候補年齢引き下げプロジェクトという30歳未満の被選挙権の獲得を目指すもので、先月号で詳しく書いた通りである。本稿ではもう一つのアクション、「FIFTYS PROJECT」を紹介しながら投票以外にできることの可能性を共有したい。
「女性がいる会議は時間がかかる」
立ち上げの前年にあたる2021年2月、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長がJOC臨時評議員会で、「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」と発言したという報道があった。当時大学生だった私は、その発言に衝撃を受け、この発言の問題性と組織としての対応の必要性を問うオンライン署名を友人たちと立ち上げた。この署名はあっという間に全国の同じ問題意識を持つ人たちに広がり、2週間ほどで15万7000筆が集まった。
この署名への賛同は、森喜朗氏の発言への抗議への賛同であると同時に、それぞれの日常にあるジェンダー不平等を体感せざるを得ない様々な出来事をどうにかしていきたいという15万人以上の意思表明でもあった。多くの人が発言のニュースを見ながら、自分の周りにもこういうことを言って女性の発言を塞いだりする人がいることを思い出し、そしてそれは「私の問題ではなく社会の問題だ」という認識につながっていった。私は勢いで友人たちと署名を立ち上げた後、自分たちの手を離れてどんどん広がり賛同数が増えていく署名サイトのページを見ながら、自分が生きる日本社会にも性別によって生じる選択肢の違い、壁の厚さ、体験した不条理に対して、これを次の世代にそのまま手わたしたくないと思っている人たちがこれだけいる、ひとりじゃないと初めて感じるようになっていった。
そしてその年末、新語・流行語大賞が発表され、「ジェンダー平等」が入っていた。その時の私の率直な受け止めとしては、「ジェンダー平等は新語? 流行語? どちらも困る」というものだった。おそらく、流行語というふうに捉えられていた。だから流行語で終わらせないために、継続的に取り組む団体をつくろうと考えるようになっていった。
FIFTYS PROJECT 候補者の顔ぶれを変える
日本社会のジェンダー平等実現のために何が必要か? やるべきことは様々であるが、私はこれまでの自分の経験からも「政治分野」から取り組む必要性を感じていた。というのも、会議の性別構成比しかり、いろいろなことを「たいしたことない」と判断しているのが、男性中心の政治であるからだ。ジェンダー不平等を生み出し再生産している政治は、ジェンダー平等実現にもっと役割を果たすことができる権力でもある。そして残念ながら、20代・30代の政治家の女性比率も2割程度と、改善が見られない。私たちの世代で構成比が変わっていないのだとしたら、ずっと変わらないのではないか。固定的性別役割分業意識は確実に薄まっている若い世代であっても、いざ立候補するのは男性が中心。そこに風穴を開けることが最初の一歩になるのではないかと考えるようになった。
そこで2022年夏、一般社団法人NewSceneというNPOを立ち上げ、「政治分野のジェンダー不平等、わたしたちの世代で解消を」と掲げ「FIFTYS PROJECT」という新しい取り組みをはじめた。これは地域からジェンダー平等の実現のために地方議会議員選挙に立候補したいと考える20代・30代の女性、ノンバイナリー、Xジェンダーを募集し、その趣旨に賛同する市民とのネットワークでともに支援するものである。
立ち上げの翌年に迎えた統一地方選挙では、候補者準備CAMP、オンライン勉強会といったノウハウなどの支援の他、ピアサポートグループ、理念に賛同する人たちとのネットワークなどで、候補者支援を実施した。結果、29名が立候補、24名が当選して議員となった。立候補、応援したボランティアの中には、2021年の森喜朗氏発言の際の署名に賛同してくれていた人たちがたくさんいた。オンラインの署名活動が入り口となり、次のアクションにつながっていくきっかけとなっていった。
女性なら誰でも応援するわけではない
FIFTYS PROJECTは、20代・30代の女性、ノンバイナリー、Xジェンダーの立候補を支援する団体であるが、その属性なら誰でも応援するという考え方ではなく、ジェンダー平等に関する政策についての項目があり、それに賛同する人を応援するという形をとっている。
ジェンダー平等というテーマは時に議会や役所でハレーションを起こす。例えば賛同項目の一つでもある選択的夫婦別姓や同性婚の実現といったジェンダー平等政策が進んでこなかった理由として、宗教右派などの影響力下にある保守政治勢力の強さはもちろんあるが、「個人的には賛成」と言いながら「自分の政治家人生をかけてまで取り組むほどではない」と考える政治家ばかりなことも理由だと、活動する中で実感してきた。女性の政治家であっても、ジェンダー平等を推進する意思がある人が政治家に増えていかなければものごとは進まない。ジェンダー平等について「自分の政治家人生をかけて取り組む」と考えている人が議会には必要なのである。
2027年統一地方選挙への目標
2027年4月には統一地方選挙がある。私たちは100名の候補者を支援することを目指し、4月10日に候補者支援プログラムへの参加者の募集を開始した。また、昨年11月には金銭的な支援を行なうための「わたしたちのバトン基金」を設立した。立候補のエントリー費用ともいえる供託金分となる30万円を候補者に支援することを目指し、寄付を募っている。
どのような候補者が出てくるのか? を決められるのは政党でなくてもいいはずだ。私たちから候補者を送り出していく、そんな実践が民主主義を育てると考えている。




