【新連載全文公開】電力総連の研究(2)脱原発候補への妨害

後藤秀典(ジャーナリスト)
2026/03/31

建設予定地から消えた原発反対議員

 二月八日、温暖な山口県岩国市にも足首まで雪が積もっていた。午後八時、NHKは選挙特番開始と同時に報じた。

 「山口二区 岸信千世 自民前 当選確実」

 岸氏と一騎打ちで闘った中道改革連合の平岡秀夫候補の事務所。集まった支持者は誰一人として声を出さなかった。一番前でテレビを見ていた選対幹事長で、元・山口県議会議員の戸倉多香子氏は、押し黙ったまま、画面を見つめていた。

 山口二区にある上関町では、中国電力が上関原発の建設を計画している。さらに使用済み核燃料中間貯蔵施設の建設の話が急浮上している。原発だけではない。山口二区にある岩国市には、米海兵隊岩国基地がある。二〇一八年には厚木基地から空母艦載機が移駐され、極東最大級の航空基地となった。「原発」と「米軍基地」。山口二区は、日本の矛盾が集中する選挙区だ。

 山口二区ではこの三年間に二回、補選を含む衆議院選挙で、岸信千世候補と平岡秀夫候補がつばぜり合いを繰り広げてきた。

 岸信千世氏の曽祖父は岸信介首相、曽祖叔父は佐藤栄作首相、伯父は安倍晋三首相。まさに保守一族の御曹司だ。対する平岡秀夫氏は、民主党、立憲民主党で六期衆議院議員を務めてきた。民主党政権では法務大臣の経験もある。上関の原発、中間貯蔵施設建設に反対の立場を明確に示している。また、防衛費の急増、敵基地攻撃能力の保有にも反対してきた。一年三カ月前の総選挙で、平岡候補は、小選挙区で、岸候補に一七二四票差にまで迫りながら惜敗したが、比例区で復活当選した。今回の総選挙でも、激しい競り合いが予想されていた。

 午後一一時半、平岡候補が、支持者の前に姿を現した。

 「ここで敗北宣言をさせていただくということといたしました。 高市総理の真実と言いますか、彼女が何をしようとしているのかというところが十分に伝わらなかった。高市総理が言っていることは、非常に危険性が高い話だと思うんですけれども、時間切れだったと思います」

 小選挙区で敗北。比例での復活もなかった。

 こうして山口県から、上関原発、中間貯蔵施設の建設に反対する国会議員は、いなくなった。

不可解なボーリング調査

 堤防で穏やかな海を眺めていると黒猫が二匹やってきて、体を摺り寄せてきた。目やにがたくさんついている。飼い猫ではなさそうだ。のんびりしているような島だが、今、大きな問題が持ち上がっている。

後藤秀典

(ごとう・ひでのり)ジャーナリスト。1964年生まれ。NHK「消えた窯元10年の軌跡」、「分断の果てに〝原発事故避難者〟は問いかける」(貧困ジャーナリズム賞)など制作。著書に『東京電力の変節――最高裁・司法エリートとの癒着と原発被災者攻撃』(旬報社)、『ルポ 司法崩壊』(地平社)がある。

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