ポルトガルの右傾化
「極右勢力が躍進」――今年5月18日にポルトガルで実施された総選挙の後、日本のメディアではこうした文言が躍った。極右とされた新興政党「シェーガ」が60議席を獲得し、第2党に躍進したからである(ポルトガル議会は一院制、定員230)。西欧各国では2010年代から右派新興政党/ポピュリズム政党が躍進し、選挙のたびに注目を集めたが、2020年代もこの潮流は衰えていない。ポルトガルでも2020年代に、突如、右傾化・新興政党の躍進が見られ、今回の選挙結果もこの流れの一環と見られた。
ポルトガル国民は何に対して「シェーガ(ポルトガル語で「もうたくさんだ」の意)」と言っているのか。本稿では、筆者の第一の研究対象であるスペインにも言及しつつ、ポルトガル政治の変化をより広い文脈の中で捉えたい。
ヨーロッパにおける位置づけ
ポルトガルでは1974年の「カーネーション革命」により、約半世紀続いた独裁体制が崩壊した。1976年に新憲法が制定され、民主主義国家として歩み始めた。1985年の文民大統領の誕生後、中道左派の社会党、中道右派の社会民主党の二大政党を中心に、政治は安定軌道に入った。1986年にはスペインとともにヨーロッパ共同体(EC)加盟を果たした。共同体からの補助金で経済の近代化、インフラの整備が急速に進み、かつてヨーロッパの最貧国といわれた面影はほぼ失われた。
ヨーロッパの「普通の国」として歩んでいたポルトガルだが、2008年の世界金融危機により大きな危機に見舞われた。ポルトガルをはじめ南欧各国は、国際通貨基金(IMF)、世界銀行などから財政支援を受ける条件として、厳しい緊縮政策を強いられた。
南欧各国は緊縮以外の選択肢がない状況に追い込まれ、既存政党や政治自体への不信感が高まった。こうして生まれたのが、スペインのポデモスやギリシアのシリザなど、左派ポピュリズム政党である。それらは反既存政党、反緊縮、反エリートを掲げ、一躍、人々の心を捉えた。西欧各国の右派新興政党が、シリア内戦で生まれた難民や移民の増加への反発を主たる背景に伸長したのとは対照的である。国/政党によって差はあるが、反EUの姿勢もポピュリズム政党に共通する特徴だ。
なおスペインでは、2010年代後半に右派新興政党VOXも伸長し、多党化・不安定化がさらに進んだ。

















