追い込まれた自民党の及び腰
2月12日、自民党がようやく重い腰をあげた。
少数与党国会で焦点となった選択的夫婦別姓制度に関する議論が、自民党のワーキングチーム(WT)で始まったのだ。「多様化する価値観、伝統的な家族制度や価値観、両方に思いを致し、しっかりとした結論を出したい」。 WTの逢沢一郎座長は会合の冒頭、詰めかけた取材陣を意識しつつ、こう挨拶した。出席議員は50人ほど。会合は非公開で行なわれた。
党内には独自に案をしたためる議員も複数いたが、そうした案の提示やどう意見集約につなげるかといった具体的な道筋は示されなかった。中身はあくまで戸籍制度などの「勉強会」だった。あるWT幹部は「事前に案の聞き取りなんかしたら、それ自体に文句を言われかねない」と吐露し、このテーマがいかに党内に緊張感をもたらすものかをあらためてうかがわせた。「詰めれば党の分断につながりかねない」(中堅議員)との危惧もある。こうした自民の事情が、たびたび野党などが提出してきた議員立法の審議入りを阻んできたともいえる。
潮目が変わったのは、昨年10月の衆院選だ。議席を増やした立憲民主党は衆院選後、導入法案の提出と審議入りを見据え、衆院法務委員会の委員長ポストを優先的に獲得した。慎重な自民を揺さぶる狙いもあった。「とうとう実現するかもしれない」。長年導入を求めてきた当事者や団体の間で期待感が高まった。昨年12月には、導入推進を掲げる与党・公明党の斉藤鉄夫代表も、官邸を訪れ、石破茂首相に直接、導入法案の提出に向けた与党協議の場の設置を提案した。
追い込まれた自民党が開いたのが冒頭の会合だった。保守派の反対が根強いなかでどう意見集約につなげるのか――。関心を持つ取材陣が会合につめかけ、党本部はごったがえした。各議員は会合後、ぶら下がり取材に応じる形で持論を展開した。