「排除されているように感じた」
言いづらそうだったが、大阪市中央区の区長や職員に対して、グリ下にいた子はそう話していた。テーブルに座りながら、区長や職員の方々は丁寧に話を聞いてくれている。雰囲気に緊張感は少しあるが、飲み物を飲みながら、少しずつ万能塀に関して話を始めていた。
グリ下とは通称で、グリコの看板の下、略してグリ下と呼ばれている。グリ下と呼ばれるようになったのはコロナ以降で、道頓堀にあるグリ下に、虐待から逃れたり、家出をしたりした子どもや若者が集まるようになり、関西のメディアに報じられるようになった。
今年3月末、大阪市が万博開催期間中に万能塀と呼ばれる塀を戎橋の下に設置して、グリ下の若者たちを(その子たちだけではないのだが)座れないようにした。そのことをTBSの「報道特集」が、「『塀を作るぐらいなら、ほかに居場所を作ってほしかった』“グリ下”塀設置 大阪・関西万博開幕の裏で居場所を追われる若者たち」として全国的に放送した。この中で私もインタビューを受けた。
私が代表を務める認定NPO法人D×P(ディーピー)では2022年8月より、大阪市や南海電鉄さんの許可を取り、道頓堀で「フリーカフェ」というテントを出してグリ下の子たちと関わっている。2023年6月には道頓堀から徒歩5分ほどの繁華街の中心に「ナイトユースセンター」という50坪ほどの支援拠点を民間で作り、グリ下の子たちの支援を行なってきた。週2回のオープンで年間4000人ほどの子たちが来るようになり、それ以外の日は面談、病院への同行支援、住居探しなどの支援を毎日行なっている。
「ナイトユースセンター」は大阪市や府からの支援などもなく、年間6500万円ほどの予算を寄付で集めて運営している。私たちの活動がきっかけとなり、2023年、大阪府知事や市長がグリ下を訪れた。その後「グリ下会議」という行政と商店街、企業とNPOが参画する会議ができ、グリ下に関する協議を、セクターを超えて議論してきた。