杉田氏の一連の発言は、たんにマイノリティへの憎悪・軽蔑を表現したものではない。標的を変えながらも繰り返し「この者たちは攻撃に値するもの」というメッセージを発しつづけ、それによりマイノリティを沈黙させ、ヘイトスピーチの害を正そうとする動きをも封じ込めることで差別を正当化する行為なのである。
「強烈な違和感」なのに公認
3月8日、自民党が参議院選挙の比例代表に杉田水脈氏を公認すると発表した。
遅かった、もっと早く動くべきだった――。昨年10月の衆議院議員選挙で杉田氏を議員にしてはならないという署名キャンペーン(1)を行なっていた私たちは、報道を見て悔やんだ。すぐさま共同声明「杉田水脈氏は国会議員にふさわしくありません」を発表し、オンライン署名サイトのChange.org上で賛同者を募った。衆院選のときは署名開始からわずか3日で1万3000筆を集め、その時点で杉田氏は立候補を取りやめた。
自民党の公認発表に、これまで杉田氏のヘイトスピーチの対象にされてきたマイノリティの人びとを含め多くの団体や市民が抗議の声を上げ、自民党に公認撤回を求める文書を送り、4月28日には全国でスタンディング・アクションが行なわれ、抗議集会も各地で開かれた。
メディアの反応も比較的早かった。なかでも東京新聞は3月17日付の社説(「杉田氏の公認 自民は差別を許すのか」)で「差別の容認と国民政党とは両立しない。公認を見直すよう求める」と厳しく問うた。こうした批判や抗議に対して、石破首相は国会答弁で、杉田氏のこれまでの発言について「強烈な違和感を持っている」「わが党はそのような不当な差別を許す党ではございません」とまで述べた(3月21日、参院予算委員会)。だが、公認を取り消すことはなかった。
杉田氏の差別発言と現在進行形の被害
自民党が「不当な差別を許す党」ではないなら、杉田氏を公認することはできないはずである。