武器輸出「解禁」の歴史と現在【書評】『戦後日本の武器移転史——1945〜2024』

『地平』編集部
2025/01/05

 書名の通り、戦後日本における「武器移転」の歴史を追うことが、本書の主題である。敗戦から現在に至る80年間に、日本は武器をどのように輸出入してきたのか、とりわけ米国からの「外圧」と国内軍需産業からの「内圧」によって、武器輸出がいかに制約を取り払われ、促進されてきたかを概観している。

 ただし、「武器」も「移転」も明確に定義しにくい用語であることも、本書の教える重要なポイントだ。移転は輸出入だけでなく、貸付や譲渡の形でも行なわれる。汎用性の高い民生品が、輸出先で武器に転用されることもある。定義の難しさは、規制の抜け道にもつながる。

 敗戦に伴い解体された日本の軍需産業だが、冷戦の本格化とともに米国の支援を受けて再興していく。1967年以来の「武器輸出三原則」は、法律化されず政令運用基準にとどまり、対米輸出では日米安保条約より下位に置かれた。それも2024年には「防衛装備移転三原則」に変わり、「我が国の安全保障に資する場合」は移転を認めうるといった曖昧な文言で、武器輸出禁止は空洞化された。

 今や日本は、ライセンス生産したミサイルをライセンス元の国に輸出できるだけでなく、それがさらに第三国へ輸出されることも可能となっている。武器輸出を禁止するどころか、自ら進んで国際的な武器移転ネットワークに組み込まれているのだ。事態がどこまで至っているかがわかる、貴重な一冊と言える。(亮)

〈今回紹介した本はこちら〉
戦後日本の武器移転史——1945〜2024
著:纐纈 厚、2024年11月、緑風出版

『地平』編集部

『地平』は地球と平和を考える総合月刊誌です。毎月5日発売。

latest Issue

Don't Miss