改憲に向けて動き出す高市自民党
2026年2月2日、高市首相は新潟県での演説で「憲法になぜ自衛隊を書いてはいけないのか。彼らの誇りを守り、しっかり実力組織として位置づけるためにも、当たり前の憲法改正もやらせてください」と訴えた。
2026年2月8日の衆議院選挙で高市自民党が圧勝、自民党だけでも改憲発議に必要な3分の2以上の316議席を占めるに至った。高市首相や小泉進次郎防衛大臣など、自民党政治家たちは改憲を進める旨の発言を繰り返している。選挙後、衆議院憲法審査会の会長として高市氏の信条に近い古屋圭司氏、衆議院憲法審査会の与党筆頭幹事として新藤義孝氏が据えられるなど、改憲の動きに拍車をかける人事にもなっている。
本稿では9条に自衛隊を書き込む改憲論の問題点に言及する。そして主権者としての「不断の努力」(憲法12条)にも言及する。
1929年、ドイツ・ヴァイマール共和国を代表する国法学者ヘルマン・ヘラーは「法治国家か独裁か」という論文を公表した。ヘラーは自由と平等を守るためにヴァイマール憲法を擁護し、ヒトラー・ナチスなどの独裁に対峙して「社会的法治国家」こそが目指されるべきドイツの未来と主張した。第二次世界大戦後、ヘラーは高く評価され、「社会的法治国家」の思想はドイツの実質的憲法である「基本法」に採り入れられた。ヘラーは国の未来を形成する国民の力を信じ、主権者のあり方にも言及していた。本稿もヘラーにならい、主権者としての「不断の努力」の重要性に言及する。
「世界中での武力行使」が自衛隊の任務に
自衛隊を憲法に明記する改憲論を主張していた安倍晋三氏は、自衛隊を憲法に明記しても、「現状を認める」だけで「何も変わらない」と主張していた。かつて総務省は、憲法改正国民投票に約850億円の費用がかかるとしていた。いまは円安・物価高でそれ以上の予算がかかるだろう。自衛隊を憲法に書き込んでも「何も変わらない」のであれば、850億円もの私たちの税金を費やすのは無駄であり、必要はない。
ただ、実際には、自衛隊を明記する改憲からはさまざまな悪影響が生じる。
まず、世界中での武力行使が自衛隊の憲法上の任務にされる。2015年の「安保法制」では「集団的自衛権」をはじめ、世界中での武力行使が自衛隊の任務とされた。「いまの自衛隊を憲法で認める」ということは、安保法制を前提とした自衛隊を認めることになる。そうなれば、世界中での武力行使が自衛隊の憲法上の任務にされる。
法の世界には「後法優先の原則」がある。いまの法では十分でないので、新たに法を追加・改正などをすることから、あとで改正された法が優先されるという原則である。いまの憲法9条は「戦争の放棄」「戦力の不保持」「交戦権の否認」を内容とするが、世界中での武力行使を自衛隊の任務とする安保法制を前提とした自衛隊明記の改憲が実現した場合、後法、つまり自衛隊明記の憲法規定が優先される。その結果、「戦争の放棄」「戦力の不保持」「交戦権の否認」を内容とする憲法9条は死文化され、自衛隊が世界中で戦うことも憲法的には問題ないことにされる。
なお、「安保法制」で認められたのは「限定的な集団的自衛権」であり、自衛隊明記の改憲が実現しても「全面的な集団的自衛権」が認められるわけではないと言われるかもしれない。ただ、実際に戦争をしている時に「限定的な武力行使」など守られるだろうか?









