改憲派多数となった国会――憲法をめぐる論点と政治情勢

飯島滋明 (名古屋学院大学教授)、大江京子(弁護士)
2024/11/06

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 10月27日の衆議院選挙の結果、自公政権は過半数割れの敗北を喫した。日本維新の会、国民民主党と合わせても改憲発議に必要な3分の2以上の議席には及ばない。だが、今後も改憲にむけた政治への警戒と行動が必要である。

 改憲をめぐる情勢と論点を掘り下げる。

「9月2日論点整理」

 2024年9月2日、自民党の憲法改正実現本部は「自衛隊明記と緊急政令に関する論点を整理」した(以下、「9月2日論点整理」と略記)。

 「9月2日論点整理」では、「選挙困難事態における国会議員の任期特例」に加え、早急に取り組むべき憲法改正の重要なテーマとして「自衛隊明記」と「緊急政令」が挙げられ、自衛隊明記については2018年の「条文イメージ(たたき台素案)」の枠組みを前提とすることが確認された。自衛隊明記に関する「条文の置き場所」は、「条文イメージ」に明記された「第9条の2」を基本的に堅持すべきことを確認する一方、総理や内閣の服務を規定した第5章に規定することも「選択肢の一つとして排除されるものではない」とされた。

 国会による法律制定を待ついとまがない場合に内閣が発出する「緊急政令」も2018年の「条文イメージ(たたき台素案)」の枠組みを前提とし、「対象とする緊急事態の類型は大地震その他の異常かつ大規模な災害、武力攻撃、テロ・内乱、感染症まん延等」とした。

 「国会議員の任期延長改憲論」とは、戦争や自然災害などにより、憲法で定められた任期内に選挙ができない場合にその任期延長を可能にするという改憲論である。戦争や自然災害などの緊急事態の際でも「立法機能」や「行政監視機能」という「国会機能」を維持するため、自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党、有志の会は国会議員の任期延長改憲が必要と改憲五会派は主張してきた。

衆議院憲法審査会での改憲五会派の主張

 緊急事態に関しては、憲法に「参議院の緊急集会」(54条)の規定がある。改憲五会派は、①参議院の緊急集会は「平時」の制度であり権限も限定的である、②対応できる期間は70日間に限られる(「70日間限定説」)との見解をとっていた。そして改憲五会派ではおおむね意見が一致したので改憲条文作成の段階に進むべきと主張していた。

 たとえば2024年6月13日の衆議院憲法審査会で公明党の北側一雄議員は、「国会は二院制が憲法上の大原則です。参議院の緊急集会はその例外となるものです。……参議院の緊急集会は、参議院の極めて重要な権能ですが、ただ、同条の1項にあるとおり、衆議院解散後40日以内に総選挙が実施され、その後の30日以内に召集される国会で新たな衆議院が構成されるまでの一時的、暫定的な権能です」と発言していた。

 国民民主党の玉木雄一郎議員も2023年6月1日衆議院憲法審査会で「緊急集会の期間については、私も最大70日とすべきだと考えます」と発言した。2023年5月18日に参考人として出席した長谷部恭男・早稲田大学教授が「70日間非限定説」を主張したことに対しては、「緊急事態を理由に行政の解釈で憲法に書いてあるルールを恣意的に拡大することに道を開くものであり、むしろ権力の濫用につながる危険性をはらんだ解釈」、「危機に備えるかどうかを決めるのは学者ではありません。それは、国民の生命や権利を守る責任を負った私たち国会議員にほかなりません」と、憲法研究者への軽蔑も含んだ批判をした。

 そして改憲五会派は衆議院憲法審査会で任期延長改憲論の議論は尽くされたと主張し、条文案作成に進むべきと主張していた。2023年11月30日、衆議院憲法審査会で公明党北側一雄議員は「議論は相当に詰まっていることは間違いないというふうに思うんですね」、「賛成会派だけで条項案についてもやはり検討していくようなステージに入っていかざるをえないんじゃないかな、その時期が近づいてきていると思うんです」と発言、立憲民主党や共産党抜きの改憲条文案作成を進める意向を示した。

「自民党」の変節

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飯島滋明×大江京子

飯島滋明 (いいじま・しげあき)
名古屋学院大学教授。憲法学。編著書等に『国会審議から防衛論を読み解く』(三省堂年)、『自衛隊の変貌と平和憲法』(現代人文社)など。

大江京子 (おおえ・きょうこ)
弁護士。共著に『秘密保護法から「戦争する国へ」』(旬報社)、『JUSTICE 中国人戦後補償裁判の記録』(高文研)など。

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