戦争の加害者にも被害者にもならないために

吉田敏浩(ジャーナリスト)
2025/07/03
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岸田前政権が2022年に「安保3文書」を閣議決定して以来、違憲の大軍拡、米日軍事一体化、戦争準備が石破政権下でも進む。しかし9条を空洞化させる日米安保・軍事同盟は、日本と他国のそれぞれの民間人の戦争被害、流血と死を、冷酷にも戦争遂行のいわば「コスト」と見なしている。日本はかつて、戦争の加害者にも被害者にもなってきた。「抑止力神話」をまぶしたカラクリを見破り、主権在民を奪う米日軍事一体化と戦争路線を止めるために、何をするべきか。


日本の最前線化と進む戦争準備

 今年6月8日、陸上自衛隊の実弾射撃演習「富士総合火力演習」が、東富士演習場(静岡県御殿場市など)であり、敵基地・敵国攻撃能力を持つ車両搭載式の長射程ミサイル、12式地対艦誘導弾能力向上型(射程約1000キロ、対地攻撃も可能)と島嶼防衛用高速滑空弾早期装備型(射程約900キロ、対地攻撃用)が初めて展示された。共に三菱重工が開発・量産する。すでに発射試験も行なわれ、今年度中に配備の予定だ。

12式地対艦誘導弾=防衛省ホームページ

 自衛隊が誇示するこれら長射程ミサイルこそ、「戦争をする国」に変貌しつつある日本の現在を象徴している。岸田前政権が2022年、他国を先制攻撃もできる長射程ミサイル(射程1000キロ前後~3000キロ)保有を主とする攻撃志向の「国家安全保障戦略」など「安保3文書」を閣議決定。以来、「専守防衛」を踏みにじる違憲の大軍拡、米日軍事一体化、戦争準備が石破政権下でも進む。

 自衛隊と米軍は台湾有事を想定して共同作戦計画を立て、「キーン・ソード」など実戦的な日米共同演習・訓練を重ねている。沖縄・州はじめ全国の戦場化と、民間人にも戦禍が及ぶ事態を前提にしたものだ。沖縄と州の各地に自衛隊のミサイル部隊を次々と配備し、弾薬庫やオスプレイの基地も建設している。

 主にミサイル保管用の弾薬庫は、全国で130棟も増設される。沖縄から北海道まで計36カ所の民間空港・港湾(11空港、25港湾)が、「特定利用空港・港湾」に指定された。自衛隊が平時の訓練から有事の出撃まで軍事利用し、米軍もおそらく使うことになる。

吉田敏浩

(よしだ・としひろ)ジャーナリスト。1957年大分県生まれ。『横田空域』(角川新書)、『日米戦争同盟』(河出書房新社)、『日米安保と砂川判決の黒い霧』(彩流社)、『「日米合同委員会」の研究──謎の権力構造の正体に迫る』(創元社)、『追跡! 謎の日米合同委員会』(毎日新聞出版)、『ルポ 戦争協力拒否』、『ルポ 軍事優先社会──暮らしの中の「戦争準備」』(共に岩波新書)など著書多数。

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