西サハラ占領の現在——資源略奪をめぐる攻防に司法の裁き

松野明久(大阪大学名誉教授)
2025/04/04

西サハラ問題とは

 アフリカ北西岸に位置する旧スペイン植民地の西サハラ。国連憲章第11章に規定のある非自治地域の一つで、自決権が認められている。非植民地化過程にあった1975年、モロッコとモーリタニアに侵略され、その後モーリタニアは撤退したが、モロッコが占領を続ける。独立を希求していた西サハラの人びと(サハラーウィ)の願いもむなしく50年が経過した。

 独立派組織のポリサリオ戦線はアルジェリアの砂漠の難民キャンプを拠点にモロッコと対峙し、西サハラの市民は占領下で激しい弾圧を受けながら非暴力の抵抗を続けている。モロッコ警察による人権侵害は深刻で、政治囚も多い。モロッコは移民を送り込むなど西サハラの「モロッコ化」を進め、サハラーウィを周縁化している。

 国連安保理は1991年に住民投票の実施を決議した。しかし、モロッコのサボタージュやその後ろ盾となっている米・仏の思惑もあって、まだ実現していない。国連事務総長特使が仲介努力を続けているが、強気のモロッコは自決権の行使につながる解決策を拒否している。

 米国はジブラルタル海峡の戦略的価値や親欧米のモロッコ王室の安定を重視する。フランスはモロッコを西アフリカのフランス語圏の要として政治的、経済的、文化的つながりを深めてきた。第一次トランプ政権時の2020年、モロッコはイスラエルとの関係正常化を受け入れ(アブラハム合意)、見返りに米国は西サハラへのモロッコの主権を認めた。2024年、フランスのマクロン大統領もモロッコの西サハラへの主権を認め、モロッコ国王を喜ばせた。西サハラの側に立つのはアルジェリアや南アフリカだ。

日本は?

 日本にとって、西サハラ問題は遠いところの紛争だろうか。実はそうではない。アフリカ諸国の中でモロッコは上位の貿易相手国であり、ODA(政府開発援助)も供与している。そして、日本のモロッコ寄りの姿勢は明らかだ。近年クローズアップされている西サハラの資源略奪に、日本も少なからず加担している。

松野明久

(まつの・あきひさ)大阪大学名誉教授。専門は紛争研究。西サハラ友の会事務局長。国連東ティモール住民投票ミッションの選挙管理官、東ティモール真実和解委員会のアドバイザーを務めた。著作に「EUと西サハラ問題」『外交・安全保障政策から読む欧州連合』(大阪大学出版会)、『東ティモール独立史』(早稲田大学出版部)など。

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