女性たちの闘いに命を吹き込む【書評】『帝国主義と闘った14人の朝鮮フェミニスト』

『地平』編集部
2024/11/05

 鮮やかな青の上着をまとい、じっとこちらを見すえる女性の絵が、本書の表紙を飾っている。一瞥しただけでは、100年前の肖像画を史料として載せたものと思ってしまうかもしれない。しかしこれは2020年に描かれた、朝鮮の独立運動家・鄭靖和(チョンジョンファ)の肖像画だ。

 本書の作者の一人・尹錫男(ユンソンナム)はこの年、韓国画(朝鮮画)の技法を用いて、14人の女性独立運動家の肖像を描いた。その過程に伴走して彼女たちの生涯を研究し、それぞれを主人公とする短編集に仕上げたのが、もう一人の作者・金伊京(キムイギョン)である。つまり本書は、命がけで植民地主義と闘った女性たちの「生」を復元し、歴史に残そうとする、画家と作家の共同プロジェクトだ。

 14人の個性に応じて、短編の形式はさまざまだ。済州の海女・金玉連(キムオンニョン)の章は、本人の語りのように描かれる。優しい漁村のおばあさん。しかし闘いの半生は凄絶だった。日本人商人による搾取に対し、何百人もの海女とともに抗議するも、銃剣で武装した警察に逮捕される。すさまじい拷問を受けても、仲間の名は決して口にしなかった。その揺るぎない権利意識を育んだのは、学校に行けない子どもたちのため、青年知識人らが立ち上げた夜間学校だった。

 「肌を見せて働く女」だからと、海女は朝鮮本土でも蔑視されたという。日本帝国主義と資本主義、家父長制と封建制の残滓。重なり合う抑圧に全身で抗った14人の訴えは、私たちにも決して無縁ではないと思わされる。(亮)

紹介した本
帝国主義と闘った14人の朝鮮フェミニスト——独立運動を描きなおす
絵:尹錫男 著:金伊京、訳:宋連玉・金美恵、2024年8月、花束書房

『地平』編集部

『地平』は地球と平和を考える総合月刊誌です。毎月5日発売。

latest Issue

Don't Miss