軍事基地は、誰がなぜ作っているのか【書評】『〈会社〉と基地建設をめぐる旅』

『地平』編集部
2024/12/05

 日本列島には北海道から沖縄まで、自衛隊基地と米軍基地と、数多くの軍事基地がある。戦前から連続している基地も多い。憲法で軍備を禁じているにもかかわらず、というところだが、いま、さらに増殖を始めている。

 軍事基地をつくると決めるのは政治家だが、それを実行するのは建設会社をはじめとする民間企業である。この本は、経済行為としての基地建設に焦点を合わせる。

 現在進行形としての沖縄・辺野古基地では、たとえば建設コンサルとして統括管理業務を請け負う日本工営、ゼネコン・マリコンとして工事を行なう大成建設、大林組、東洋建設といった企業の役割が検証される。大浦湾の貴重な自然環境を破壊する埋立工事で、砂杭を打ち込む不動テトラ社や、特殊な船舶を所有する深田サルベージ建設、無理筋のサンゴ「移植」を手がける環境コンサルの株式会社エコー等々、初めて知る読者が多いだろう。

 たて糸としては、全国の基地建設に戦前から「活躍」してきた大成建設の歴史が、明治維新後「鉄砲屋」として創業した大倉喜八郎の事績から紹介されていく。一方、竹中工務店は基地建設では名前が出てこないという。

 政府の要請があろうがなかろうが、受注するもしないも自由なはずで、住民無視の環境破壊や戦争準備の基地建設で利益をあげることの責任は問われるべきだろう。

 類書もなく、初めて知ることばかりで刺激的だ。軍事基地をめぐるダークツーリズムの本でもある。(熊)

〈今回紹介した本はこちら〉
〈会社〉と基地建設をめぐる旅
著:加藤宣子、2024年11月、ころから、定価1980円(税込)

『地平』編集部

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