本書の著者は、15歳でレディース(暴走族)の総長となり、傷害や覚醒剤使用で少年院に入った過去をもつ。周囲の支えを得て「生き直す」決意をし、現在は高校教師をしながら全国の少年院を訪ね、少年たちの話に耳を傾けている。4人の少年たちとの交流を綴ったのが本書だ。
17歳のコウタは小学生のときから両親の暴力を受け、次第に家に帰れなくなった。それでも「いい子にしていない自分が悪い」と思っていたという。16歳で家出し、友だちの家を転々とするうち、犯罪グループから声がかかり、強盗や薬物売買に手を染めていく。そして入った少年院。「ここにいたい。ここにいれば、相談できる大人もいるし、殴られないし、危険も感じない」という言葉が痛ましい。
19歳のタクミは、先輩から犯罪に誘われた友だちを守ろうとして、自身が犯罪グループに脅され巻き込まれていった。大きく報道された強盗未遂にも関わってしまう。少年院に入り、被害者を傷つけた事実に向き合うなかで、自分はこれから夢を追っていいのかと苦しむようになった。「幸せになっていいんだよ」と著者は励ます。「被害者の人が、あのときの子は、いましっかり生きてるよって聞いたら、ほっとするんじゃないのかな」
友だち思いで、しっかり物を考えられる少年たちが、なぜ犯罪に手を染めてしまったのか。大人たちは何をしなければならないか。心の通じる著者だからこそ引き出しえた少年たちの言葉に、しっかり耳を傾けたい。(亮)
〈今回紹介した本はこちら〉
『帰る家がない 少年院の少年たち』
著:中村すえこ、2024年8月、さくら舎、1650円(税込)