【ネパール大規模洪水】ヒマラヤからの警告

プラカシュ・ダハル、バリーシュ・チョウドリー
2026/10/21
ネパールのヌワコット郡デビガットで鉄砲水と土砂崩れが起きた後、泥に覆われた家々。 2026年8月29日。Reuters/共同

積み重なってきた警告

 8月26日、ボテコシ川の洪水はヒマラヤ山脈を轟音とともに駆け下り、信じがたいほどの猛威を振るった。

 氷、岩、水が、瓦礫を巻き込みながら渓谷を猛スピードで流れ、家屋、橋、道路、車両をなぎ倒し、本稿執筆時点で900人以上の命を奪った。5000人以上が依然として行方不明だ。家族たちは、かすかな希望にすがりながら、今もその帰りを待ちつづけている。

 地域社会は引き裂かれ、人々の生活は泥や瓦礫、残骸の下に埋もれてしまった。救助隊員たちは、不安定な斜面やさらなる土砂崩れの脅威、上流に新たに形成された水域といった危険にさらされながら、瓦礫をくまなく調べ、行方不明者の捜索を続けている。被害の規模は想像を絶するものであり、その映像を見るのもつらいほどだ。

 しかし、水曜日の朝、突如起きたかのように見えたこの雪氷圏の惨事は、決して突然のものではなかった。警告は長年にわたり積み重なっていた。

 科学的な警告、環境的な警告、後退する氷河、雪氷圏の変化を示す紛れもない兆候――。にもかかわらず、私たちはその警告に耳を傾けることができなかった。ボテコシ川の災害は、気候危機が遠い未来に待ち受ける抽象的な脅威などではないことを、痛烈に思い知らせるものだ。

 今ここで起こっている災害は、ヒマラヤの回廊を壊滅させ、その上にある人々の命と生計を破壊している。ヒマラヤにおいて、今や問題は、山が、その麓に住む人々が避難するだけの時間を確保できるかどうかということだ。

 科学者たちは、発生した一連の出来事の詳細な経緯を解明しようとしている。初期の評価では、氷雪雪崩、落石、あるいは土石流が一時的にレンデ川を塞ぎ、それに続いて水と土砂の壊滅的な放出が起こったと指摘されていた。しかし、衛星画像とその後の分析により、引き金となったのは氷河の崩壊と氷岩雪崩である可能性がますます強まっている。

 だが、最終的な呼称が「氷河湖決壊洪水(GLOF)」であれ、氷岩雪崩であれ、地滑りによる洪水であれ、あるいはこれらの危険が連鎖的に組み合わさったものであれ、下流に住む人々にとってその区別はほとんど意味をなさない。山が崩落した。川が決壊した。人々が命を落とした。

 そして、この惨事は、科学者や政府、環境保護団体が長年にわたり、ヒマラヤ地域の温暖化によって状況がますます不安定化していると警告しつづけてきた地域で起きたのである。

惨劇の40日前に検討されていた

 7月17日、ボテコシ川の惨事が発生するわずか6週間前、ネパールのナガルコットで開催された科学者、氷河学者、水文学者、政策立案者、市民社会団体らによる会合では、ヒマラヤの雪氷圏の不安定化に伴う危険性の高まりや、気候変動によってさらに悪化しているこの不安定さによるGLOFの発生頻度増加について警告が発せられていた。

 「FoEアジア太平洋」と「プロ・パブリック」(別名「FoEネパール」)が主催したこの会議では、氷河が後退した際に何が起こるのか、ネパール国内にとどまらず南アジア全域にわたって、インド洋やベンガル湾へと注ぐ河川がどう流れることになるのか、そしておそらく最も重大な問題として、ヒマラヤを源流とする広大な河川網に依存し、その沿岸に暮らす人々に何が起こるのかという、困難な課題が検討された。

 ネパールが悲劇に見舞われたのは、今回が初めてではない。2024年のターメの災害では、雪崩が氷河湖に突入し、氷河湖の決壊を引き起こして下流に壊滅的な被害をもたらした。ICIMOD(国際山岳総合開発センター)によると、この事象では15万6000立方メートルの水が放出され、エベレスト地域は緊急かつ積極的なリスク管理を必要とするGLOF(氷河湖決壊洪水)のホットスポットとして特定された。

 2025年7月、ネパール・中国国境付近のレンデ川で発生した洪水について、ネパール水文気象局は氷河湖決壊が原因であると結論付けた。この種の自然災害は、従来の早期警報システムが検知するよう設計されたものではない。ほとんどの早期警報システムは、降雨量に基づいて洪水を予測しており、晴天の日に山の一部が崩れ落ちる可能性を考慮していないのだ。

 ICIMODとUNDP(国連開発計画)による調査では、ネパールのコシ川、ガンダキ川、カルナリ川の各流域だけで2070の氷河湖が確認され、そのうち21の湖が潜在的に危険な状況にあると特定された。低所得国が、変化しつづけるすべての氷河、湖、雪崩を自力で監視することは、現実的に期待できない。

崩れた自宅から救出したニワトリを抱きかかえる女性。ヌワコット郡デビガット。
2026年8月30日。Reuters/共同

遅々として進まない資金拠出

プラカシュ・ダハル、バリーシュ・チョウドリー

プラカシュ・ダハル(Prakash Dahal)
ネパールの公益保護フォーラム(Pro Public)のガバナンス・インクルージョン顧問

バリーシュ・チョウドリー(Bareesh Chowdhury)
フレンズ・オブ・ザ・アース・アジア太平洋の地域ファシリテーター

2026年11月号(最新号)