【連載】ルポ 世論工作――原発と情報統制(7)美談にされたTOKIOの虚実

野池元基(「東京電力福島第一原発事故に関わる電通の世論操作を研究する会(電通研)」メンバー)
2026/11/03

安倍首相のTOKIOへのすり寄り

 2018年12月28日、TOKIOのメンバーと安倍晋三首相がにこやかな顔で並ぶ写真が、首相官邸のインスタグラムにアップされた。

 「TOKIOの皆さんに、総理公邸でお目にかかりました。東日本大震災の後、福島復興のために頑張ってくださっています。DASH村の思い出、福島への熱い思いを伺い、私も胸が熱くなりました」と書かれている。

 それから半年もしない2019年5月10日、安倍氏はTOKIOとピザ屋で再会し、その時の様子を自身のツイッターにアップした。「福島復興のために……」と再び発信している。安倍氏は、これは私的な会食だったという。

 なぜ安倍氏は短期間にTOKIOと二度も会ったのか。

 1回目は、自民党が発行する女性誌『りぶる』(2019年2月号)での巻頭記事の座談会のためであった。14ページにわたるスペシャル記事である。

 座談会の記事の中心に置かれたのは「福島復興」と「東京五輪」である。写真がふんだんに使われている。「ふくしまプライド。」のポスターや新CM発表会、彼らがアンバサダーを務める「東京2020 オリンピック・パラリンピック フラッグツアー」の巡回会場でのもの、首相とメンバー各々が固い握手を交わす姿などである。

 座談会の終盤、城島氏は「TOKIOのCDデビューと、総理のお誕生日は一緒ですよね」と言う。さらに「同じ日なので、ずっと親しみを感じていました。政権を長く続ける秘訣を教えていただけますか」と質問をする。安倍氏は意気込みを語り、選挙を話題に持ち出す。4月に統一地方選挙、夏には参議院議員選挙(投票日は7月21日)があるので、「自民党を応援していただきたい」と呼びかけるのだ。

 そして、ページをめくれば、座談会につづくのは参院選の公認候補予定者の一覧である。ピザ屋の再会の投稿は、参院選が近づいての、自民党の宣伝というわけだ。

 実は当時、この写真が世間で話題になった。ジャニーズ事務所(当時)はタレントの肖像権の管理に厳しく、インターネット上のニュースサイトやウェブ媒体への写真掲載をNGにしていた。福島県の開示文書でも、彼らの広告やポスターの写真は黒塗りである。公用ならまだしも、2回目は私人としてのSNS投稿とされているのに、TOKIOが写っている。この異例の扱いは、安倍氏への特別配慮だったのか。そんな推測が駆けめぐった。毎日新聞がこの疑義を記事にしている。疑問をジャニーズ事務所に投げかけたが回答はなかったと、記事にはある。

 この件で、一連の情報の中にあるのは、「福島復興」「復興五輪」「安倍政権」「自民党」「ジャニーズ事務所」、存在を感じさせる「電通」である。これらの結び目にあるのが〝利権〟であり、それを覆い隠すためにTOKIOのポジティブなイメージは使われている。その彼らを〝福島復興の顔〟として、全国に拡散・定着させる役割を果たしたのが、この時の安倍首相だった。

TOKIO課の発足

 TOKIOを起用する福島県の「風評払拭」のPR事業は、2017年度から東北博報堂(博報堂の完全子会社)に委託された。事業費は約4億4000万円である。この年度から仕様書に「テレビCMにはTOKIOを起用すること」と明記される。起用するタレントを指名してある仕様書は、これ以外には思い出せない。

 また、補足しておくが、この事業を前年度まで受注してきた電通は、県が新たに設けた「風評被害」対策の事業など何本かを受注している。その合計額は前年度よりも増して約12億5000万円だった。

野池元基

「東京電力福島第一原発事故に関わる電通の世論操作を研究する会(電通研)」メンバー。長野市在住。農業に携わりつつ、雑誌『たぁくらたぁ』を編集発行。福島原発事故に関する電通事業の情報公開請求活動で日隅一雄・情報流通促進賞2021大賞受賞。著書に『サンゴの海に生きる』(農文協)、共著に『環境を破壊する公共事業』(緑風出版)など。

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