【連載】再生可能エネルギーの底力(第5回)快適な暮らしの再エネ自給

まさのあつこ(ジャーナリスト。博士(工学))
2026/10/25
大出達弘さんと亀﨑美智子さん(カメプラン前で7月4日筆者撮影)

 国内のエネルギー消費量の約3割を占めているのは建築物分野だ。家庭やオフィスで電力を自給すれば、再エネの主力電源化に一歩近づく。送電線に依存しすぎない暮らし方を模索する人々を追った。

オフグリッドハウスという選択

 「冬は暖房をガンガン、夏は冷房をガンガンかければ、快適には暮らせます。だけど、次世代にツケを回さずに快適な暮らしをするなら、断熱性能が良い家を作ることが大前提です」

 そう語った大出達弘さんは、連れ合いの亀﨑美智子さんと共に太陽光と蓄電池を組み合わせた「オフグリッドハウス」を手掛ける株式会社カメプランの一級建築士だ。この日、「快適&省エネルギーな暮らし」をテーマにした勉強会(生活クラブ逗葉コモンズ環境平和委員会主催)で、環境省の認定資格である「うちエコ診断士」でもあるライター有川美紀子さんと対談。その後に参加者を連れていく施主・志村智子さん宅を例にオフグリッドハウスの極意を語った。

 「志村さんの家では、昼間、大きな窓から熱をたくさん取り入れて、温まった空気を逃がさない状態にします。冬に暖房をかけなくても、夜まで温度が下がらず、一日中快適な温度で過ごせます。夏も涼しいなら、エネルギーを結構使うでしょうと思われるところですが、この家のオフグリッド率、僕は電力自給率のことをそう呼びますが、シミュレーションではおよそ83%。残り17%の電気を外から買います」

 ここで読者は気がつくだろう。オフグリッドといってもカメプランが設計するのは、送電網(グリッド)から完全に切り離した家ではない。高気密・高断熱構造にした上で、床下に熱交換換気システムを入れて、熱を逃がさずに外気と室内空気を入れ替える設計だ。

 「システム上、電気を売っていない時はうっすら買うシステムになっています。それを計算に入れなければ98%自給。CO2削減量で言えば年間2700kg、杉の木で言うと180本の吸収量に相当します」

 施主の志村さんは、最初から「オフグリッド」を目指していたわけではない。「30年住んだ家をリフォームして80歳まで快適な家で暮らしたい」というのが出発点だった。友人である有川さんがモデルハウスも兼ねた大出・亀﨑夫婦の自宅兼建築事務所を取材する際に、「一緒に行こう」と誘ったのがきっかけだ。

 「大出さんのオフグリッドハウスに網戸があるのを見て、窓を開けてもいい高断熱・高気密があると知って」興味が湧いたのだという。

 5月に完成した新居の家中に温湿度計・CO2濃度計を置いた結果、「温度の快適さは期待通りだけど、常時60%以下の湿度とCO2濃度が低く保たれていることの快適さは想像すらしていなかった」と志村さんは満足感を語る。

 志村宅の設計は365日、1時間ごと8760時間分の陽の光や風向を計算に入れた上で行なわれた。

 同様の計算を大出・亀﨑宅で行なった結果、建設前のシミュレーションではオフグリッド率は96・8%、1年間暮らした実測は94・6%だった。雨続きで、どんなに頑張っても年に2、3日は電気を買わなければならない日があるという。

 「たとえば、あとの1割を、隣家や狭い地域と線でつないで電気を融通し合うことができれば、今は制度上できないけど、そういう仕組みができれば、海外からのエネルギー輸入に依存しない生活インフラができます」と大出さんは将来を語った。

大出達弘さんと亀﨑美智子さん(カメプラン前で7月4日筆者撮影)
志村さん(左)と有川さん(志村宅内で7月30日筆者撮影)

蓄電池技術が15年で進化

 「送電網に頼る仕組みではダメだ」と、福島第一原発事故後に川崎から岡山に移住し、太陽光と蓄電池を導入しただけではなく、自宅につながる送電線から接続を切って物理的に「オフグリッド」した田中優さんは、知る人ぞ知る筋金入りの環境活動家だ。

まさのあつこ

ジャーナリスト。博士(工学)。JBpressで「川から考える日本」を連載中。著書に『あなたの隣の放射能汚染ゴミ』(集英社新書)、『四大公害病』(中公新書)ほか。

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