「社会に絶望し命を絶った主人ですが、残された私どもがただ一筋、希望の光を感じることができるとするならば、使命感を持ってその職務を全うしようとする皆様の思いです」
これは兵庫県問題の取材を担当する私たちがとても大切にしている言葉だ。今年1月に亡くなった竹内英明元県議のご夫人からいただいたメッセージだ。
取材の過程でくじけそうになるたびに、この言葉が私たち取材チームに勇気を与えてくれた。同時に、このメッセージは私たちに問いかける。はたして、私たちは使命を全うできているのかと。
この稿で報告する兵庫県の公益通報者をめぐる問題の報道、特に知事選挙後の報道は、TBSの「報道特集」がほぼ独走状態を続けてきた。それは、喜ぶべき独走状態ではなく、むしろ孤立無援に近い状況で、問題の深刻さの割には他の報道機関、特に放送メディアの及び腰の姿勢が目についた。
いま、この問題を報じてきた8カ月余りを振り返って感じたこと、思うことを報告したい。
TBS経営トップのメッセージ
私は2001年4月にTBSに入社したので、今年で社歴が25年目となるが、兵庫県問題の一連の報道はTBSという放送局だからこそできたと考えている。
冒頭から自社の自慢めいた内容で大変恐縮なのだが、株主総会シーズンを迎えて放送局の経営体制にも注目が集まる昨今、あながち的外れでもないと思うのであえてここから書き始めたい。